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「共謀罪」混迷 金田法相には荷重すぎる

(2017年2月9日午前7時30分)

 【論説】今国会最大の焦点となっている法案なのに「成案を得た後に法務省刑事局長も加わって議論するのが国民の利益にかなう」として質疑回避を狙った閣僚がいる。金田勝年法相である。理由は簡単だ。質問に十分答えられるだけの知識も能力もないからである。

 「共謀罪」の構成要件を厳格化した「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を巡って、国会審議が続いている。

 金田氏は野党側の厳しい質問に対し、答弁に窮する場面が何度もあった。審議がたびたびストップ。官僚の書いた答弁書を棒読みする光景は熟議に程遠く、それだけでも立法府の権威を損ねるものだ。メディアの論調も厳しい。よほど困ったのだろう。そこで前述の珍文章となったのだ。

 この文書は事務当局にまとめさせ、法務省記者クラブに配布した。国会で「質問封じだ」と問題視されると、「国会に対して審議のあり方を示唆するものと受け止められかねず、不適切だった」と撤回、謝罪した。野党が責任を追及しているが、「辞任の資格」は十分にあるのではないか。

 法相に多少同情するならば、確かに改正案は中身が固まってはおらず、3月の提出が検討されている。詳細を説明するには無理があるのは事実だ。しかし、それも言い訳になろう。

 そもそも「共謀罪」は過去3度廃案になっている。重大な犯罪に合意しただけで実行しなくても処罰できるため、「内心の自由を侵す」「市民団体や労働組合も対象になる」と世論の反発が渦巻いた。捜査機関の拡大解釈による乱用が懸念されたからだ。

 今回はイメージを刷新し名称を「テロ等準備罪」に変更、対象犯罪も676から200〜300程度に絞る方向だ。世界でテロが多発し、2020年東京五輪・パラリンピックに向けた安全対策に不可欠という論理である。さらには「国際組織犯罪防止条約」を締結するために国内法が必要として理解を求める。

 安倍晋三首相は質疑で声高に「共謀罪と呼ぶのは誤りだ」と強弁を繰り返す。▽犯罪に合意しただけで処罰する共謀罪とは全く違う▽合意に加え下見などの実行準備行為がないと逮捕できない▽適用は暴力団など「組織的犯罪集団」に限られる▽一般の人が処罰されることはあり得ない−というのがその理由である。

 そう断じるなら、法案の必要性や基本的な枠組みをしっかり説明する責務があるのは当然のこと。

 ところが、野党が「計画段階で処罰するなら共謀罪と変わらない」と指摘し、現行法でテロに対処できない理由や一般人が処罰されない根拠をただしても「法案を検討中だから」と逃げている。過去の政府見解との整合性も問われる上、準備行為が具体的に何を指すのかも定かでない。

 法案は憲法が保障する表現の自由や基本的人権を侵しかねない重大な問題を内包している。またぞろ数の論理と強権的な手法で法案を押し通すのはごめんだ。

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