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相模原事件3カ月 「地域共生の道」閉ざすな

(2016年10月31日午前7時30分)

 【論説】神奈川県相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」での入所者19人が殺害され、27人が重軽傷を負った痛ましい事件から3カ月が過ぎた。

 「障害者は不幸を作ることしかできません」。容疑者は衆院議長宛ての手紙で差別意識をむき出しにしていた。その反社会的な思考に戦慄(せんりつ)を覚えた。悲劇の再発を防ぐために幅広い検証が求められる。

 容疑者の男はやまゆり園職員だった。日ごろの障害者への暴言が問題視され、退職後は「精神疾患で自傷他害の恐れがある」としてすぐに措置入院となった。新たに大麻の陽性反応も判明したが、12日後には退院し治療や連絡などのフォローは行われなかった。

 退院の事実は施設にも知らされず、職員がたまたま容疑者を見かけ警察と相談した。しかし時既に遅し、平成以降で最多の犠牲者を出す惨事を招いた。

 まず退院判断の妥当性に疑問が残る。さらに重大なのは病院や自治体の明らかな連携不足だ。容疑者が住居を変更すると話したり、診察を受けなかったりしたのに、その後の行動を把握せず警察や施設への連絡もしていなかった。

 一方で、今回の事件を契機に全国で防犯カメラを増やしたりフェンスを設けたり、監視を強化する動きも見られる。障害者団体などには過度の防犯対策による「要塞(ようさい)化」で地域とのつながりが絶たれることを懸念する声もある。

 障害者の生活が地域社会から隔離されることは、世界的に進む障害者福祉の流れに逆行するからだ。

 国連が「国際障害者年」を定めたのは1981年。閉鎖的な施設で過ごす障害者の社会参加を促そうと、「施設から地域へ」を合言葉に運動を推進した。

 被害に遭った施設も地域への開放と連携に積極的だったと聞く。しかし安全確保を求めるあまり、せっかくの共存・共生の動きが後退することになれば残念至極である。

 さらに施設職員だった男がなぜ障害者を憎悪し凶行に及んだのか、誰しもが持つ「生きる」という基本的権利を否定する優生思想に傾倒したのか、心の闇を検証することもカギとなる。

 というのも今回の悲劇以外にも、川崎市の老人ホームでは介護職員が高齢者をベランダから投げ落とす事件が発生。山口県の福祉施設では知的障害者を職員が暴行する衝撃的な映像が発覚している。

 虐待が続く背景には、もちろん一握りではあるが、福祉現場の過酷な労働の割に待遇面で報われない不満があるとの指摘もある。

 障害者虐待防止法が4年前に、差別解消法が今年4月に施行されたものの、今なお残る差別や偏見の芽を根絶するにはまだ課題が多い。もちろん福祉政策を統括する国や自治体が制度の改正と見直しを熟議するのは必然である。

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