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屋外広告物と景観 在るべき所にしかるべく

(2016年9月4日午前7時30分)

 【論説】「屋外広告物適正化旬間」(9月1〜10日)である。いかめしい用語だが、要はどこでも見かける看板やのぼり、広告塔などが法や条例の通りに設置されているかを見つめ直す期間といっていいだろう。

 会社や店のPR、案内誘導に看板などは有用だ。半面、周辺の環境にそぐわなければ地域の美観や眺望を損ねる。そこで、自由な経済活動を保証する一方で公共財産ともいえる景観を保護する必要がある。

 その両立を図るのは何も行政だけの役割ではないだろう。ルールにはおのずと市民意識が反映されていく。旬間を機に、屋外広告物を手がかりとして景観について考えてみたい。

 ■ニッポンの「神話」■

 「ニッポン景観論」(集英社)という本がある。著者は米国出身の東洋文化研究者で京都府亀岡市在住のアレックス・カー氏。日本各地で撮影した「醜悪な建築」や「過剰な看板」などの写真を数多く使い、本来の美しい景観を取り戻すよう提言している。

 このうち看板を扱った章では多くの景観規制がある世界的な古都・京都でさえ「旧市街の駐車場の看板は24時間休みなく点灯」しているといい、日本には景観にまつわる数々の「神話」があると指摘している。

 例えば「看板が多ければ多いほど、経済効果が上がる」。これが正しくないのはハワイなどの実例に明らかで、林立する看板には逆に「視覚汚染」によるマイナスの経済効果もあるとの認識を持つべきだという。

 さらに、名所旧跡や神社仏閣で「撮影禁止」などを呼び掛ける看板類には「細かく指導しないとお客さんが戸惑ってしまう」という神話がある。看板自体は必要だとしても、ほとんど看板のない伊勢神宮でマナーの悪さを見聞きしないのは「場所の品格」によるのではないかと提起している。

 ■インバウンド時代の価値■

 日本や東洋の文化に詳しいカー氏には、徳島県の山村などにある空き家を再生してきた実績がある。本県でも坂井市三国町の旧市街地で、空き家を宿泊施設に改修する計画を監修している。そんな著者の意見は手厳しくも適切な提言と受け止めるべきだろう。

 まして、海外から誘客するインバウンド政策を推進しているわが国である。景観をことのほか大切にする国際的な価値観を軽視しては、遠からず行き詰まるのではないか。

 本県でも2018年に福井国体、22年度に北陸新幹線の延伸などを控え、国内外客の来県が期待されている。高い意識によって景観を整えていくべきなのは言うまでもない。

 ■県条例を改正■

 屋外広告物をめぐってはことし3月、規制を強化する県の改正条例が県会で可決され、10月1日から施行となる。

 改正条例は、看板設置の「禁止地域」を自然歴史、観光地、文化施設といった景観の特性に応じた3種に細分化。新たに養浩館庭園など観光地25カ所の周囲、また北陸新幹線の沿線などで規制する内容だ。施行後6年間の経過措置や、不適格看板の撤去などに対する支援なども盛り込んでいる。

 のどかな田園風景を含む豊かな自然や遺跡などの歴史的景観が本県の特徴である。その美観を最大限生かすためには、看板などは在るべき所にしかるべく設置する規制は避けられない。

 ただ、屋外広告物以外にも景観に関わるものは多い。なかでも、市街と農村とを問わず張り巡らされている電線や電柱は影響が大きい。地中に埋設すれば災害対策にもなるが「工費が高い」「地震国だから無理」などとされる。これも神話だと、カー氏は言っている。国に一考を求めたい。

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