福井県の総合ニュースサイト


福井の速報

全国の速報

福井のニュース  特集・M9.0東日本大震災

避難先の街に落書き「被災者帰れ」 福島・いわき、東電賠償の有無で溝

(2013年3月6日午前7時10分)

拡大 原発事故の避難者が集中する福島県いわき市の仮設住宅。年末から、避難者を中傷する落書きや、仮設の車を損壊する事件が相次いだ 原発事故の避難者が集中する福島県いわき市の仮設住宅。年末から、避難者を中傷する落書きや、仮設の車を損壊する事件が相次いだ


 東日本大震災、福島第1原発事故からまもなく2年、被災地の現状に迫る連載企画「止まった時間」(2)

 福島県いわき市にある仮設住宅で年明け早々、車の窓ガラスが割られたり、ペンキをかけられる被害が相次いだ。高級外車やスポーツカーが狙われた。昨年末には市役所の正面玄関の柱や市内2カ所の公民館の壁に、スプレーで「被災者帰れ」と落書きされる事件もあった。

 同市は人口約33万人。福島県最大の都市で、福井市と越前町、池田町、永平寺町、勝山市が合併したほどの市域と人口を持つ。福島第1原発から南に約40キロ。立地地域とつながりは深く、この街に約2万4千人、美浜町と若狭町全住民に匹敵する避難者が集中している。

 「あぜんとした。まさか…って」。20代の息子のスポーツカーが被害にあった母親が振り返る。ガラスが何カ所もたたき割られ、ドアや屋根も傷つけられていた。「息子が高校卒業後に買って大事にしてきたのに」

 仮設は広大な県立公園の中にあり、一角を占領した形になっている。

 「迷惑をかけているのは事実。でも私たちも1日も早く帰りたい。そう言って歩くわけにはいかないし…」と戸惑う。古里は早期帰還を目指す避難指示解除準備区域。「もう少し待ってほしい。もう少しで帰れるから」と訴える母親。息子は「やった人が賠償金がうらやましいなら、自分と代わってほしい」と吐き捨てた。

   ■ □ ■

 多くの避難者を受け入れ支える同市は、津波と地震の被災地でもある。市南部の小名浜港から北東約10キロ、美空ひばりの「みだれ髪」に歌われた岬、塩屋埼。この地区は8・5メートルの津波に襲われた。約270戸あった住宅は10分の1も残らず流され、多数の死者が出た。中学校のグラウンドには今も、がれきが巨大な山のまま残る。

 海に臨んで立つひばりの歌碑の向かいで、鈴木一好さん(61)が小さな土産物店を営んでいた。津波や被災直後の写真80枚以上を並べ、観光客に当時の状況を説明する。「本当は忘れたい。自分も集落の親類を15人亡くしたから」。でも体験を伝える使命感がある。

 店は被災から8カ月後、生活のために再開した。避難先の仮設と店を行き来し営業する中、ある客の声が耳に入った。「この店の商品なら200万円で全部買えるな」。別の客には、店の立ち食いそばを聞こえるようにけなされた。原発事故の避難住民だった。「何様だ」との言葉を飲み込んだ。


 「津波被災者と、東電の賠償がある原発被災者は生活が歴然と違う」と鈴木さんは言う。全ての原発事故の避難者が十分な賠償を受け取っているわけではないことは承知の上。横柄な人は、ごく一部であることも分かっている。「でも、それが目立ってしまう」とため息交じりに話した。

   □ ■ □

 一挙に住民が増えた街は、さまざまなきしみを生んだ。「仮設周辺の医療機関の混雑がひどい。以前からの医師・看護師不足が顕在化している」と医療関係者。「今までなかった場所、時間が渋滞するようになった」とバス運転手。アパートなど7千戸超が借り上げ住宅として提供され、賃貸物件も不足している。

 市の担当者は「避難者が税金を払わず行政サービスを受けているとの批判や、ごみの分別にも苦情がある」と、市民のわだかまりを隠さない。仮設約2500戸を抱えるいわき中央署も「時間がたつにつれ、市民の思いが単純に『支えよう』ではなくなっている」とし、仮設駐車場に防犯カメラの設置を始めた。

 鈴木英司副市長は「今が市民の踏ん張り時。一人一人が震災前より良い街にする強い気持ちを持たないと、いわきの復興はない」と訴える。同時に国に対し「避難住民がいつ帰還するか分からないことが、市民の不満にもつながっている。見通しを打ち出すべきだ」と語気を強めた。

》原発集中立地県の新聞社が出版した原発関連の電子書籍のご案内

 

 

福井のジャンル

福井新聞ご購読のお申し込み D刊お申し込み

ニュースランキング

弔電サービス「わたっくす」

ぷりん

福井新聞文化センター 風の森倶楽部


〒910-8552 福井県福井市大和田2丁目801番地

TEL:0776-57-5111

本ページに掲載の記事・写真などの一切の無断掲載を禁じます。