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| 第4部 みんなが注目(10) |
家庭の食卓も質向上 給食献立は母親考案
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| 2006年6月7日掲載 |
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| 小学校の給食献立を話し合う母親たち。「おしゃもじクラブ」と名付け、地区ごとに月1回活動する=熊本県上天草市 |
「今回の給食は何にしましょうか。子供たちがニコニコするメニューをつくりましょうね」。学校栄養職員の松本珠美さん(30)が、校区内の母親たちにこう切り出すと、すぐに返答があった。
「玉ネギとトマトのサラダの上に、スライスした玉ネギの素揚げば乗せるのはどがんね? 名付けてダブルオニオンサラダたい」。「そらよかね。ナッツも入れるとカリカリしておいしかっじゃなかと?」。別の母親も次々とアイデアを披露する。そんな、楽しいやりとりが続いた。
美しい海に囲まれる熊本県天草諸島。上天草市立上(かみ)小学校の給食献立を、母親たちが考える「おしゃもじクラブ」の活動時間だ。
五月中旬、地元の公民館。子供を同校に通わせる地区内の母親が集まった。この日は六月八日の給食献立を決める大きなイベントでもあった。
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おしゃもじクラブは同校の松本さんが二年前にに発案した。「食育は家庭で実践しないといけない。学校で子供たちにだけ教えても、生きてこない」。同校に赴任して一年間考え抜いたのが、地域と家庭がはぐくむ学校給食だった。母親たちが給食を知って、献立を作り、それを自宅の食卓に生かす―というわけだ。
同クラブは同校PTA母親部が主体となって活動。地域に根付かせる狙いがある。月一回、地区ごとに母親たちが集まっての給食献立づくりでは、主食、主菜、副菜のバランスを考えたものに仕上げていく。その献立を親が食べる試食会もある。
これまでのユニークメニューは「地元産のタコとオクラが入ったお好み焼き」「鳥肉とおから、豆腐を使ったハンバーグ」など多彩だ。
献立づくりでは「栄養士の視点にはない、母親ならではの発想がある」と松本さん。「給食にはこれはちょっと無理かな…」と思うこともあるが、会合後にじっくり大量調理法を考える。
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同校でも朝食抜きの児童が増え、一―二割程度がときどき食べてこないという。中山豊茂校長は「子供たちが親の犠牲になっていた」と振り返るが、クラブ発足で母親も子供たちも変わったという。
「地元の産物や旬の食材を使うなど、食に気を使うようになった」とPTA母親部長の宮崎京子さん(39)。今年からはクラブ便りを発行するなど、活動の幅は広がりをみせる。
児童二人を同校に通わせる水野みどりさん(38)は「仕事もあって忙しいけど、家族、子供のために栄養のバランスを考えるようになった」と話す。
地域の団結力が強く、栄養職員、教諭らの熱意で生まれた同クラブ。母親らの参加率は平均七割と高いが、さらにアップさせることが課題だ。
老人会、農家、商業者、保育園などが給食に携わるシステムも出来上がっている。「食育を地域に根付かせるのは都市部でもできる。それぞれ地域の強みを生かせばいいのでは。家庭と学校のやる気が重要」。松本さんはこう実感している。=第4部おわり= |
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| 第4部 みんなが注目(9) |
| 自給自足で生きる力 全寮制の農業高校 |
| 2006年6月6日掲載 |
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| 乳牛の乳搾りに取り組む愛農学園農業高校の生徒=三重県伊賀市 |
七分米のご飯にみそ汁、肉じゃが、サラダ、そして牛乳…。三重県伊賀市の愛農学園農業高校で出されたある日の昼食メニュー。コメや野菜、肉などをふんだんに使ったメニューはもちろん同校で作られたものだ。同校には、農業を学ぶために全国各地から集まった五十七人が寮生活を送る。育ち盛りの生徒たちの食欲はおう盛。食べ始めて二、三分もすると、次々とお代わりに立ち上がる。
有機農法でコメや野菜、果物を作り、ニワトリ二千羽、ブタ百頭、乳牛三十五頭を飼育する。生徒たちが食べるコメ、肉類、牛乳、卵の自給率は100%。生徒たちが教職員の指導を受けながら、自給自足に近い生活を続けている。
「実際に体験して農業の大変さが分かった。食べ物を残さないよう気をつけるようになった」と横浜市出身の松田空君(二年生)。愛知県出身の野々山恵さん(同)も「朝食をしっかり食べるようになった。ニキビが消えて食事の大切さを感じている」と話すなど、生徒たちの食に対する関心は高い。志賀親則校長(64)は「残飯はほとんど出ない。自分たちでコメや野菜を作ることで、食の大切さを学び、感謝するようになる」と農業の持つ教育力を強調する。
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同校が運営している農場は、酪農、養鶏、養豚、野菜、作物(稲作)、果樹の六部門。一年生の間にすべての部門の作業を体験し、二年生からは各部門に分かれて専門的な知識を学ぶ。午前五時四十分に起床。同七時に全員がそろい朝食を食べて登校する。午前中は教室で授業を受け、午後からはビニールハウスや畜舎で実習に取り組む。授業前と放課後、日曜日の牛の世話などは、ローテーションで担当している。
二年生の夏休みには、北海道の農家に二十日間ホームステイしながら酪農を体験。三年生になると、学校農場の経営にも参加する。自分たちで予算を立てて、経費を管理し、収益を計算、経営分析までを行う。生徒たちは、学びながら経営感覚を身につけていく。
農場六部門を合わせた年間の収入は約四千万円。「牛やブタなどの酪農が収入の柱で、純収益千四百万円がノルマ。黒字を出している学校農場はほかにないと思う」と志賀校長。純収益のうち八百万円は、同校の運営費の一部に使われている。
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同校では、一年生のゴールデンウイーク明けから、ニワトリの解体作業を体験する。卒倒する生徒が出ることもある授業だが、この経験を通して生徒たちは「生きている」から「生かされている」に、大きく考えを転換させるという。生命の尊さを学ぶ貴重な教材となっている。
「命と向き合い、汗をかいて働かないと大事なものは見えてこない。食べることは生きること。農作業を通じて生徒たちは、生き方も学んでいる」と志賀校長は訴える。食と農を基本とした同校の教育は、生徒たちの「生きる力」を培っている。 |
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| 第4部 みんなが注目(8) |
| 学校、家庭で意識改革 朝ごはん条例 |
| 2006年6月5日掲載 |
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| 保温ジャーから盛られた給食のご飯はホカホカ。児童の表情も自然とほころぶ=青森県鶴田町の鶴田小 |
「朝ごはん条例」。青森県鶴田町が、二○○四年四月に全国に先駆け施行したユニークな条例だ。人口約一万五千人の小さな町が、国の食育推進基本計画の手本となる施策を掲げ、全国から注目されている。
きっかけは○○年度にさかのぼる。町民の平均寿命を調べたところ、全国平均を下回り、特に男性は同県内でワースト五位の七四・五歳だった。同年の調査で、青森県は全国一の短命県とされただけに、深刻な事態だった。
○一年度には三歳から十四歳までの児童、生徒約千九百人を調査。結果は「朝食を食べない日がある」は11・3%で、全国平均の9・6%を上回った。「夜食を毎日食べる」は19・7%と、全国平均7・6%の倍以上。二割が肥満傾向、午後十時以降に寝る子も三割、体調不良を訴える子は七割を超えた。
不規則な生活からくる朝食抜き、肥満…。調査結果から、全国に比べ同町の方が乱れているという現実が突きつけられた。条例化に「朝食を食べる、食べないは個人や家族の意識の問題」との反発もあったが、危機的な状況を示すと理解の輪が広がった。
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朝ごはん条例は▽ご飯中心の食生活へ改善▽早寝早起き運動の推進▽コメ文化の継承―など六項目の基本方針を掲げ、それぞれ具体的な数値目標、行動計画を示した。
具体的には、毎週水曜日にパンとめん類を交互に出していた学校給食を、すべて米飯に切り替え、不評だったパック詰めご飯を廃止、町立七小中校の全クラスに保温ジャーを導入した。鶴田小一年の山田涼太君(7つ)はホカホカご飯をほおばり「炊きたてみたい」。松山壽栄・学校給食共同調理所長は「お代わりもできるし食べ残しが激減した」と話す。
給食に町特産のリンゴを出し、農家が率先して野菜を提供するなど地産地消も進んだ。五、六年生対象の「にぎりまんま塾」も開講。親元を離れて五泊六日の日程で、買い物や料理、洗濯などを体験させている。
町挙げての取り組みに、家族全員が早起きし一緒に朝食を作って食べ、後片付けも一家で行う家庭が急増。朝食だけでも子供と一緒に食べるようになった父親も増えるなど、意識が浸透するようになったという。
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条例の成果は数字になって表れた。朝食の欠食率は○四年度に8・4%と全国平均を下回り、昨年度は6・8%に。三歳児の肥満傾向は17・9%から5・1%に激減。健康診断を受診する町民も大幅に増えた。竹浪正顕教育次長は「生活リズムが整い、落ち着いて授業を受ける子供が増えた」と手応えを口にする。
折しも国は本年度から「早寝早起き朝ごはん」国民運動を推進。朝ご飯を食べない子供を一○年度をめどに「ゼロ」にすることを掲げた。国に先駆け成果を上げている鶴田町。「小さな町の挑戦が、世直し運動の大きなヒントになったのでは」と中野町長は胸を張った。 |
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| 第4部 みんなが注目(7) |
大消費地で食材PR 農漁村が出前授業
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| 2006年6月4日掲載 |
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| 千葉県から訪れた修学旅行生に、ジャガイモの芽出し作業を教える藤原さん(左)=岩手県花巻市 |
「子供たちは、炊き上がったご飯の状態しか知らなかったんでしょうな。みんな驚きの表情でしたよ。農業の話を始めると集中して、しーんと静かになってね」。岩手県花巻市の農業、藤原将志さん(64)は東京都の小学校で行った授業の様子を振り返る。
昨年十月。藤原さんは自分の水田から刈り取った稲を携え、世田谷区の北沢小を訪れた。もみを稲から取り外し、小さなすり鉢に入れて軟式野球のボールでこすらせた。もみ殻の中から米が出てきた。米の脱穀と精米を教える授業は、子供の目の色を変えさせた。
岩手県は二○○四年度、同校など都内の三小学校をモデル校に指定。県内農家や県職員らを講師として派遣し、岩手産食材を用いた授業をする「いわて食育首都圏交流事業」を始めた。昨年度はモデル校を六校に増やし約三十回の出前授業を実施、県産食材も百品目以上供給した。
授業はバケツを用いた田植えや豆腐作り、サケの解体、イクラに触れさせるなど、五感を刺激する体験型が中心。昨年度からは「いわて食材探検ツアー」と銘打ちモデル校の児童、保護者を岩手に招いて収穫などを体験させる事業も始めた。
食料自給率が1%の東京では田畑が少なく、食物がどのように育つのか、現場を見る機会が乏しい。「子供は料理される前と後の状態を見て、触れて、感じる。珍しさも手伝ってか、楽しくてしょうがないといった様子だった」(藤原さん)
JAいわて花巻の「はなまきグリーン・ツーリズム受け入れ農家の会」の会長も務める藤原さんは、五月中旬には千葉県船橋市の修学旅行生にジャガイモの芽出し作業などを教え、伝統料理を振る舞った。
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海の幸、山の幸を”大消費地”の学校でPRしようという、出前授業に取り組む自治体が増えている。子供は伝統料理を食べられるとあって興味津々。自治体にとっても、食材の認知度アップと販路開拓が期待できる。
日本の捕鯨発祥の地として知られる和歌山県太地町は今年一月、神奈川県川崎市の小学校で出前授業を実施。実物大のミンククジラを描いた幕の前で、捕鯨、クジラ食について専門家が説明。町教育長が、人間は動物など他の生き物の命を犠牲にして生かされていることを話し、クジラを竜田揚げにした給食を出した。高知県でも○一年度から「高知野菜出前授業」を行い、埼玉県や大阪府などの小学校でナスやアールスメロンなどを使った授業を展開している。
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生産者ら食に携わる人が話をするだけに、その言葉には重みがあり、説得力を増す。生産者と消費者の”顔の見える”関係が構築され今後、各地で活動が活発化しそうだ。
出前授業をする自治体は、食材供給が定着すれば、消費拡大にもつながると期待する。「地産地消」を超え、日本の食料自給率のアップを指す「国産国消」にもつながると関係者は意気込んでいる。 |
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| 第4部 みんなが注目(6) |
| 農の心 次代へつなぐ JA「あぐりスクール」 |
| 2006年6月3日掲載 |
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| 昔ながらの筋引き作業を学ぶJA北信州みゆきの「あぐりスクール」の児童=長野県飯山市 |
緑の山々に囲まれ、中心部を千曲川が流れる長野県飯山市。はだしになり、ひざまで水田につかり大はしゃぎする子供たち。そんな姿を見詰め、JA北信州みゆきの清水謙一総合対策部長は嘆息する。「まさか地元の農家の子供に農業を学ばせる場を設けるなんて…」
同JAは、一九九四年から市や市観光協会と連携して、スキー場の民宿やペンションのオフシーズン対策として、都会の子供を対象にした農業体験事業に着手。二○○二年には、六十校近くの児童を受け入れるまでになった。
農作業に夢中になる都会の子供たち。その一方で、地元の子供たちの方がむしろ農業に無関心なことに気付くようになった。自宅の畑になるニンジンやトマトに見向きもしない。コメが稲からできることすら分からない状態だった。
「農業のこと、生産現場の苦労を知らないのは、実は地元の子じゃないのか」。そんな疑問がJA職員や農家からふつふつとわき上がった。
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国内の農業は、機械化、省力化が進み、知らず知らずのうちに子供から遠ざかっている現状がある。農業従事者も減少し、そのうえ高齢化も進んでいる。「高齢組合員のリタイア時に、組織や事業の弱体化を招くこと」がJAの懸念材料。それを防ぐためにも、次代の担い手育成が大命題の一つとなっている。
そうした危機感を背景に、JA北信州みゆきが○二年、全国に先駆けて始めたのが、地元の子供向けの農業体験「あぐりスクール」だ。
教室は小学三―六年生を対象に年間通じたカリキュラムが組まれ月に一―二回、「食」と「農」の楽しさ、厳しさを教える。落花生やトウモロコシ、大豆の植え付け、田植え、稲刈り、収穫、地元農業高校の生徒との交流など多岐にわたる。収穫した野菜や米の販売、調理も体験する。生産から流通、消費まで一貫したプログラムが定着し、今年はJA管内の約十校から九十人近くが”入学”した。
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五月二十七日の授業は、シイタケの菌打ちと、児童の多くがもっとも楽しみにしていたという田植え。苗を植える場所の目印を付ける筋引きをした後、昔ながらの手植えに挑戦した。横一列になって植えることで「大勢の人が力を合わせて、やっと一粒の米が作られることを自然に感じるのでは」と指導する飯山市の農家、栗岩敏子さん(68)は目を細めた。
スクール五年目を迎え、卒業生の飯山南高生が指導に加わるなど地域ぐるみで子供を育てる取り組みに発展。JAに興味を持ってくれる若い父母も目につくようになった。全国のJAの共感を呼び現在、約六十のJAが同様の事業を展開中で、五月中旬には鳥取県で全国サミットも開かれた。
先人の苦労と食への感謝を感じてもらうスクール。「農を全身で学ぶ貴重な体験は、家族の心を結びつけ、食への感謝の気持ちを芽生えさせてくれる」。JA北信州みゆきの職員たちの確信は揺るがない。 |
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| 第4部 みんなが注目(5) |
| 強い使命感持ち監視 安全は自分たちで |
| 2006年6月2日掲載 |
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| 機関誌の編集作業をするNPO法人「食品と暮らしの安全基金」の小若代表(中央)ら=東京都千代田区 |
人体に有害な食品添加物、残留農薬、遺伝子組み換え食品…。食の安全を脅かす問題に、全国の消費者団体が厳しい目を光らせる。食品の安全監視に取り組むNPO法人「食品と暮らしの安全基金」(東京)もその一つだ。
「原稿締め切りまであと五日。このコメントはもっと分かりやすくした方がいいな」。五月中旬。スタッフ四人が月一回発行する機関誌最新号の編集作業に追われ、事務所は夜遅くまで慌ただしい雰囲気に包まれる。活動の柱となる機関誌では、インスタントラーメンや外食の功罪、ファストフードの原材料比較など毎回特集を組む。
「私たちの活動は悪いものを摘発し、価値のあるものを残すこと。ただ全否定はしない。改善点も模索する」と小若順一代表(56)は強調する。
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同基金は一九八四年に会員七十人でスタートした。今年で二十二年目を迎え、会員は約四千五百人にまで広がった。
食品や暮らしにひそむ化学物質の安全性についてテストや調査も実施。同基金を一躍有名にしたのは、八○年代末に「ポストハーベスト」という言葉を浸透させた輸入レモンの残留農薬問題だ。店頭で売られるレモンを独自に調査し、ベトナム戦争で使用された枯れ葉剤の主成分と同じ農薬を検出した。国内に波紋が広がった。
九七年の調査では、自然食品店をうたう東京都内の業者が発売するアワ、キビといった雑穀から残留農薬を検出し、機関誌で指摘。その後もこの業者を追及。有機食品でもないのに「有機」、生産者と契約をしていないのに「契約栽培」などと偽装表示する不正をあばく発端を担った。
「海外のNGO(非政府組織)と国際会議も開催。場合によっては国に申し入れも行う」と小若代表。新しい視点で活動の幅を広げる予定だ。
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「遺伝子組み換え大豆を食べ続けたラットの新生児の半数が死亡」―。市民団体「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」(東京)の事務局、小野南海子さんは、ロシアの科学者イリーナ・エルマコバ氏の研究結果に驚きを隠せなかった。
「不安が現実のものになった瞬間だった。人間でも次世代に影響が出る危険がある。なぜ行政はちゃんと表示させないのか」と訴える。この団体では七月にイリーナ氏を日本に招き、全国七会場で講演会を開く。
これまで遺伝子組み換え作物の作付け禁止や表示の徹底を求めてきた。二○○二年には、除草剤をまいても枯れない稲の開発を進めていた愛知県と民間企業の事業に猛反対し撤退させた。
昨年十二月、米国産牛肉輸入再開決定について国に抗議したのが、市民グループ「食の安全・監視市民委員会」(東京)。「消費者の安全を願う気持ちを無視した拙速」と真っ向批判した。
「安全は消費者の手でつかむ時代。これからも監視の目を続け、世論に訴えていく」。メンバーたちの意気込みが、食の問題の根深さを映し出す。 |
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| 第4部 みんなが注目(4) |
| スローフード運動 土地の味 掘り起こせ |
| 2006年6月1日掲載 |
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| 釜炒り茶に使う茶葉を摘み取る「スローフード若狭おばま」のメンバーや参加者たち |
「葉が球状になるまでよくもんでください。もみ方が足りないと、味がでないですからね」
五月下旬、小浜市内の寺に古くから残る茶畑で、茶摘み作業が繰り広げられた。慣れない作業に四苦八苦するのは、昨年同市に発足した民間団体「スローフード若狭おばま」などのメンバーたちだ。
摘んだ茶葉は鉄鍋で炒(い)り、もんで乾燥させ「釜炒り茶」になる。中国から製法が伝わり、国内では同市遠敷地区の根来区で作られたのが最古ともいわれる。それだけに参加者の手にも力が入る。
出来上がった釜炒り茶は、地域に伝わる味を広く知ってもらおうと、秋にある「御食国(みけつくに)若狭おばま食育・食文化の祭り」で振る舞う。杉谷光由会長(46)は「土地に根ざした食の掘り起こしは、スローフード運動の大きな柱なんです」と力を込める。
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スローフード運動は一九八○年代、小規模なブドウ農家の経済的自立を支援する取り組みとして、イタリア・ピエモンテ州のブラ市で生まれた。消えつつある郷土料理や質の高い小規模生産者を守ること、消費者に味の教育を進めていくことなどを目標に、生産者と消費者を結ぶ活動などを繰り広げた。
同時期にファストフードが台頭。画一的な食が各国を席巻する中、郷土食を見直すスローフード運動が世界中で共感を呼んだ。その後発足した協会には約百三十カ国の約八万人が加盟、「国際哲学」と位置付けられるまでになった。
国内ではBSE問題や偽装表示事件など、食に関する事件が相次ぎ、○二年ごろから全国各地で支部設立の動きが加速。現在四十六の支部があり、農家との交流体験や学校での食育授業などの活動を個別に展開している。
国内支部の支援団体であるスローフードジャパン(事務局・仙台市)の若生裕俊会長は「近年の支部拡大は、食の不安の一方で、地元のものを再評価していこうという機運の現れ。都会至上主義からの価値転換が進んでいる」と分析する。
同ジャパンでは現在、大量生産される加工食品の”大洪水”から伝統食品を守る「味の箱舟」計画を進めている。スローフード若狭おばまの「サバのなれずし」「谷田部ねぎ」をはじめ、各支部からのエントリーはすでに五十を超えた。
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若生会長は「今こそ『質のよい食』が何かを問い直し、何を食べるかをよく考えて選ばなければならない」と危機感を募らせる。その背景には、食料自給率が先進国最低水準の約40%、生産者の人口比がわずか3%、うち67%が六十歳以上の高齢者という待ったなしの状況がある。
「前提として、子供の味覚の開発を含めた食育の強化が重要」と若生会長。今年三月には「食育委員会」を設置、食品についての知識を消費者や児童に提供する「食育プログラム」の策定を急ぐ。生産者と消費者の距離を縮める、地道だが大きな一歩が始まる。 |
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| 第4部 みんなが注目(3) |
| 家族の憩い、健康追求 需要喚起するメーカー |
| 2006年5月31日掲載 |
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| シャープの水で焼く調理器「ヘルシオ」の仕組みを説明する商品企画部の田中隆さん(左)=大阪府八尾市 |
流通、食品業界が相次ぎ「食育」に参入する一方で、消費者の食に関する潜在的なニーズを掘り起こすメーカーの動きも活発化している。
オーダーメード型キッチン「エクシモ」を送り出した松下電工(本社大阪府門真市)もその一つ。商品企画課の西田美佐子さん(38)は、そのコンセプトを「かつて日本人のコミュニケーション空間だった”囲炉裏(いろり)”の再生」と説明。「母親が夕食の洗い物をしているオープンキッチン。子供たちが食事を終えたテーブルで宿題に取り組み、父親はキッチンと一続きのリビングでパソコンのキーボードに向かう。家族が集まり食事や会話を楽しむ、そんな場を提供したい」
同社は二年前、キッチンに「食育」の概念を取り入れた。エクシモでは、家族構成やライフプランに合わせ、キッチン、ダイニング、リビングを一体化させた空間を提案。流し台のスライド式収納を生かした踏み台、DVDプレーヤーを利用したレシピの紹介など、親子で料理を作るための工夫も凝らす。
西田さんの同僚で開発担当技師の乾潤子さん(38)は「コミュニケーションをコンセプトに、製品開発する過程で食育の概念がぴたりとはまった」と振り返る。「流し台は家具の一部。キッチン空間を家族がくつろぐ家の真ん中にある場所にしたい」。二人の製品に込めた思いは熱い。
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「二十世紀の日本社会は簡単、便利、早くがキーワード。電子レンジをはじめ家電製品は、これにフィットするよう開発された。しかし二十一世紀に入り、キーワードは環境、安全、健康に変わった」。シャープ(本社大阪市)商品企画部の田中隆さん(48)は「ウォーターオーブン ヘルシオ」開発の背景に社会の変化を挙げる。
三〇〇度の過熱水蒸気が食品内部の脂分、塩分を洗い流す一方、ビタミンCなどの抗酸化物質を壊さない。一昨年発売された「水で焼く」調理器は、健康をキーワードにしヒットにつながった。
量販店での実演販売では、「野菜の甘みが増した」「焼き魚の塩分が控えめになるのにおいしい」などと好評だった。小浜市御食国(みけつくに)若狭おばま食文化館でも二年前から、同社の寄贈を含む五台を「調理体験」で利用。中高年を中心に食への関心を高める効果があったという。
「総菜や冷凍食品が増える中、野菜一つ取っても本来の味を知らない子供が増えているのでは」と、田中さんは警鐘を鳴らすとともに今後、本物の味へのニーズが高まるとみている。
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「家族が一緒に過ごす時間を持ちたいという思いは、誰もが無意識のうちに持っている」(西田さん、乾さん)。「素材の味を生かす健康志向の調理機器ならば、料理すること、食べることを楽しめる」(田中さん)。両社の開発担当者は、コミュニケーション、健康と、異なるアプローチを取りながらも、食育に大きなビジネスチャンスを感じ取っている。 |
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| 第4部 みんなが注目(2) |
| 社会貢献 比重高める 食品業界が出張授業 |
| 2006年5月30日掲載 |
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| 「食べ過ぎはだめです」。ポテトチップスのおやつの目安量を教えるカルビーの社員。スナック菓子の栄養についても説明する=東京都練馬区立大泉小 |
「普段おやつとして食べるポテトチップスの量はどれくらいかな?」。こんな問いに、児童たちは紙皿を山盛りにして、にっこり笑った。「これぐらいは食べるよ」
東京都の練馬区立大泉小。五月下旬、五年生三クラスの八十七人が食育の授業を受けた。児童たちはポテトチップスをはかりにのせ、重さをチェック。「百十五グラム」「八十グラム」「百十グラム」…。次々と発表する。
教師役は、大手スナック菓子メーカー、カルビー社員の新谷英子さん(33)ら三人。うち一人は管理栄養士の資格も持つ。「両手に軽くのるぐらいが適量なんです。正解は三十五グラム」。児童たちから驚きの声が上がった。
授業はパッケージ表示の見方、おやつの正しい食べ方など盛りだくさん。手作りのパネルやビデオを使った説明が続いた。新谷さんは「どんな食べ物でも食べ過ぎはよくない。おやつは適量を守ってほしい」と願う。
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同社は、二○○三年度から「スナックスクール」と銘打ち、小学校への食育出張授業を無料で行っている。全国展開のため昨年には管理栄養士八人を採用した。
「スナック菓子は体に悪いイメージだけが先行している。このままでは少子化も進みファンが逃げてしまう」。同社広報室では食育参入のきっかけをこう強調する。
○三年度は五校(延べ三百四十人)で実施。○四年度は三十五校(同二千六百人)、本腰を入れた昨年度は二百八十九校(同二万千人)に急伸した。
出張授業はイメージアップの一方で、マイナス情報の提供で売り上げが下がる危険性もはらむ。ただ「長くファンで居続けてもらいたい」(同社広報室)と考えるように、食育を”追い風”と受け止めスナック菓子との正しい付き合い方を浸透させる狙いがある。
本年度も既に二百校近い応募がある。学校側は「給食を残す子が多い。身近なおやつから入って、乱れた食生活を見直すきっかけになれば…」と期待を込める。
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ファストフード大手の日本マクドナルドは昨年七月、子供向けホームページ(HP)「食育の時間」を開設した。「情報社会化の中で、正しい食の在り方を発信する義務があった」とコミュニケーション部の山本美和チーフ。HPではゲーム感覚で栄養バランスや体の基礎代謝、食の安全などが学べる。
昨年度は全国の五小中学校で試験的に実施。本年度はこのHPを手軽に使えるマニュアルを作り、七月以降に本格始動するという。
一方、モスフードサービスでは、店舗スタッフが学校に出向きハンバーガーの作り方などを体験させる食育授業を行う。昨年度は全国二十二校(延べ千五百人)の実績。学校近くの店長らが教師役となり地域連携を打ち出す戦略だ。
キッコーマン、カゴメ、雪印乳業など食育へシフトする企業が相次いでいる。どのメーカーも「社会貢献」を強調、今後もブランドイメージ向上へ食育の比重を高めたいとしている。 |
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| 第4部 みんなが注目(1) |
| 情報提供 企業の責任 流通業界が本腰 |
| 2006年5月29日掲載 |
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| カスミの食育体験学習「スーパーマーケットツアー」で野菜に含まれる栄養素を児童に教える高野さん。子供の目も真剣だ=茨城県つくば市 |
色とりどりの野菜や果物が所狭しと並ぶスーパーの売り場。白衣を着た管理栄養士が野菜を手に、児童に語り掛ける。「この野菜は何かな? どんな栄養があるのかな?」。
茨城県を中心に北関東一円で食品スーパーを展開するカスミ(本社つくば市)が、各店で小学生を対象に繰り広げる食育体験学習「スーパーマーケットツアー」のひとこま。野菜や果物の栄養素、一日に食べる量などを教わった児童は、千円以内で根菜、葉菜など種類別の野菜と果物を買うゲームをし、野菜サラダを作った。
同社は二○○三年から野菜や果物を食べ健康増進を目指す「ファイブ・ア・デイ(5 A DAY)運動」を開始。”授業”は年々増え、昨年は五十八回開催し、約二千七百人が学んだ。リコピンやビタミンCの効果を詳しく知る児童がいる一方、「野菜を食べると太るって言われた」と無邪気に話す児童も。店頭で教える高野真由美さんは力を込める。「子供の野菜離れは大人の責任。正しい食の知識を蓄えた大人に育ってもらうため、まず子供の意識を変えたい」
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米国では、一九九一年に始まったこの運動で野菜や果物の消費量が15%以上増え、がんの死亡率低下などに成果を挙げた。日本では、○二年七月に「ファイブ・ア・デイ協会」が設立され、商社や食品会社、小売業、経済団体など約九十社が名を連ね、「一日五皿(三百五十グラム)以上の野菜と二百グラム以上の果物を食べよう」と呼び掛けている。
大手商社の伊藤忠商事も昨年十一月中旬から約一カ月間、東京本社の社員食堂で野菜を多く使ったメニューを提供。モニター社員の三十人は、内臓脂肪が減少、血液検査結果も改善したという。「生鮮食品を流通させる企業として、まず社員に野菜の大切さを再認識してもらえた。将来的には流通増につながるはず」と広報部は期待する。
コンビニ大手のローソンは、美容と健康をコンセプトにした「ナチュラルローソン」を○一年から東京都、大阪府、兵庫県で展開。栄養バランスの整った低カロリー弁当や雑穀入りのおにぎりなどを販売し「コンビニを毛嫌いしていた健康志向の女性にも足を運んでいただいている」(広報部)。立地の自治体と提携し、地場産食材を使った商品も店頭に並べている。厚生労働省と農林水産省が作成した一日に必要な食事の種類や量をイラストで示した「食事バランスガイド」を掲げるスーパーやコンビニ、ファミリーレストランも目立ち始めた。
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食の安全・安心への意識が高まっている。しかし消費者は、何を食べていいか分からず不安を抱えている。カスミの小濱(こはま)裕正社長は言う。「だからこそ必要な情報を分かりやすく伝えることが食に携わる企業の社会的責任」。国民の台所を支える流通業。消費者動向に目を光らせながら、こぞって「食育」に食指を動かし始めた。
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