【越山若水】現在77歳でドイツ文学者の池内紀さんは70歳を迎え、初めて経験する事柄を書き留める観察手帳を作った。最初のページに「すごいトシヨリBOOK」と明記した▼同名の書籍(毎日新聞出版)では老いと向き合う方法や老いの特性、年寄りゆえの楽しみなど独創的な身の処し方を披露。“池内流提言”が随所に顔を見せる▼まず自らの老いに関して「自分以上のスペシャリストはいない」。病気にならないと健康が分からないように、医者であっても、本当の意味で老いを理解していない▼また生き方や健康状態もみんなそれぞれ違う。Aさんのやり方がBさんに通用するとは限らない。他人任せでなく、個人個人が独自ルールを作ることが大切。要するに「自分が主治医」というわけだ▼そして介護の先生から聞いた言葉を紹介する。「老いとは寄り添え。病とは連れ添え」。つまり年老いた、病気になったと大騒ぎせず、健康に振り回されないよう助言する▼100歳以上の高齢者が全国で6万9千人を超えた。「人生100年時代」も近そうだが、老いは誰にも例外なくやって来る。その備えは欠かせない▼池内さんは綿密な設計図を描かない主義。年齢にこだわらず、老いに抗(あらが)わず、誠実に向き合う。老いの兆候や変化をむしろ面白がること。どうやら池内さんは力まず自然流で「すごいトシヨリ」を目指すらしい。

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