【論説】「故郷への恩返し」をうたい2008年に導入された「ふるさと納税」が岐路に立たされている。

 一部の地方自治体が高額な返礼品を呼び水に多くの寄付を集めている現状に、国が制度の抜本的な見直しを検討すると表明したためだ。返礼品を寄付額の30%以下の地場産品に限定し、違反した自治体に寄付しても税の優遇措置を受けられなくする仕組みを法制化するとしている。

 「税収の奪い合い」「不毛な自治体間競争」などといった批判が飛び交う一方、国内の寄付文化の醸成に一定程度貢献してきたことも事実だろう。国が4月の施行を目指す規制内容を問題視する声もある。健全な発展に向け国は無論、自治体レベルでも方策を探るべきだ。どの自治体も納得できる形で再スタートを切れるよう熟議を求めたい。

 国が規制に乗り出す背景には、返礼品の額が過剰に競り上がり、それに伴って寄付も増大する状態が一向に解消しないことがある。2度にわたって自粛を要請する通知を出したが、一部は応じていない。

 寄付額に対する返礼割合が65%に及ぶ自治体、他県産品や格安航空会社で使えるポイントなどをリストに挙げ、輸入品や換金可能なギフトカードなどを返礼品にする自治体もあった。家電製品の返礼で寄付額が72億円に上ったり、寄付が税収の3分の1に達したりする自治体もあったという。

 ふるさと納税の提唱県である福井県では、通知に反する自治体はないが、過剰返礼の実態を知れば「正直者がばかを見る」と不満を募らせるのではないか。寄付する人も自治体支援という本来の趣旨から離れ、ネットショッピング感覚との指摘がある。これでは国が腰を上げるのもやむを得ないだろう。

 ただ、国の「30%以下の地場産品」との方針にも異論がある。是正を迫られている自治体関係者は「なぜ3割なのか、何をもって地場産品なのか」と反発、納得できる議論を求めている。さらに与党内からは「寄付は無償のはず。返礼品があるのはおかしい」と制度廃止を求める声も出始めている。

 現に被災地に、ふるさと納税を使った無償の寄付が相次いでいる。北海道の地震ではポータルサイト「ふるさとチョイス」で1億2千万円を超える寄付が集まっている。見返りを求めず、地域の課題解決につなげるという本筋に沿った寄付も浸透しつつあるとみるべきだろう。自治体は、具体的なふるさと再生のためのプロジェクトを掲げて寄付を求め、事業の進展や成果を報告するなど「つながる」ことを重視するべきだ。

 最近では返礼内容が「モノ」から「コト」に広がっている点も注目したい。出身者向けの墓守の代行なども関心が高いとされ、持続可能な制度へ知恵を絞りたい。ただ、ふるさと納税だけでは地方の底上げは不十分だ。税制面の改善など国が果たす役割は大きい。自民党総裁選でこそ、その具体論を聞きたいのだが。

関連記事