【論説】掛け値なしの歴史的快挙だ。テニスの全米オープン女子シングルスで、大坂なおみ選手(日清食品)が優勝した。四大大会のダブルスや車いすテニスは日本選手の優勝者が出ているが、シングルスを制したのは初となる。戦った7試合は王者にふさわしい堂々たる内容。特に決勝戦は相手にペナルティーが科され、異様な雰囲気となる中で、揺るがない精神力を見せた。まだ20歳と若いスターの誕生を祝福したい。

 大会の戦績からは、強さが改めて浮かび上がる。7試合で落としたセットは一つだけ。86ゲームを取り、失ったゲームは34止まり。サービスゲームを相手に奪われるブレークは5回しか許さなかった。

 決勝は、最強女王と呼ばれるセリーナ・ウィリアムズ選手(米国)を強力なサーブとストロークで圧倒した。大坂選手は今年3月にウィリアムズ選手と初対戦し、そのときも勝利している。今回の優勝で、実力が本物だと世界に証明した。

 大坂選手はウィリアムズ選手への憧れを公言しているが、テニスの道のりもウィリアムズ姉妹と重なる。ハイチ出身の父レオナルドさんに、2歳上の姉まりさんとともに手ほどきを受けた。レオナルドさんはテニス経験がないが、やはり父としてウィリアムズ姉妹を鍛えたリチャードさんの指導法を学んだという。

 今季の飛躍は、昨年12月からサーシャ・バイン氏をコーチに迎えたことが大きかった。ウィリアムズ選手や今年の全豪オープン女王、ウォズニアッキ選手(デンマーク)らの指導経験があり、手腕は折り紙付きだ。バイン氏の指導では特に精神面が成長。以前は試合中に落ち込むことが多かったが、集中力が増した。

 印象的な場面があった。ミスをしたとき大坂選手は意識的に笑顔をつくり、切り替えたのだ。感情を制御できなかったウィリアムズ選手と対照的である。大坂選手は、バイン氏を「本当に人格者」と信頼を寄せ、「練習が楽しくなった」と話している。質の高いトレーニングを積みながら、それが苦痛にならないのは2人の関係が良好な証しだ。

 陽気なインタビューで一躍人気も広がっている。今後さらに、四大大会や東京五輪などで活躍してくれることを期待したい。

 日本のスポーツ界としても、大坂選手の成功から学べることは多いのではないか。才能を大きく伸ばすには、どんな指導や環境が望ましいか。暴力やパワハラは問題外だが、あるべき指導の姿を探るために、いろんな競技の関係者に参考にしてほしい。

 今大会の決勝は、スポーツ観戦の在り方も考えさせられた。ひいきの選手が敗北したとしても、促されるまで表彰式で勝者をたたえなかったのは、米国テニス界の失点だろう。福井国体・障スポや東京五輪・パラリンピックなど、これからスポーツに親しむ機会は多い。勝敗はつきものだが、すべての選手の健闘をたたえる気持ちは忘れないようにしたい。

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