【論説】路線バスで乗客と荷物を同時に運ぶ「貨客混載」が先月、池田町と越前市を結ぶ池田線で始まった。運送事業者はトラック配送をバス便に代替することでドライバーの負担を軽減。交通事業者はバスの空きスペースを有効活用して一定の貨物収入を確保できる。

 荷物の量から、過疎地域の赤字路線を解消する特効薬とまではいえない。公共交通や物流の運用に悩む地域が、実情に合う交通システムや輸送サービスを考える契機としたい。

 ■ドライバーの帰宅早く■

 ヤマト運輸(本社東京)が福井鉄道(同越前市)と連携し、北陸で初めて運用している。仕組みはこうだ。

 池田町内と越前市の配送センターを日に朝昼夕往復していた同運輸のトラックのうち、昼の便を福井鉄道の路線バスが請け負う。トラックドライバーは往復約80分の運転時間を減らし、町内での再配達や集荷などに労力を振り分ける。1往復分の燃料費も削減される。

 福井鉄道はバスの座席に設けた専用コンテナに荷物を入れ、1日10個程度を運んでいる。荷物の積み降ろしはヤマト運輸のドライバーが行う。バス運転士の作業は増えず、遅延や乗客への支障もないという。

 運用から1カ月が過ぎ、効果は表れている。町内での再配達は夜間に偏るが、トラックが一度配送センターに戻らない分、作業が前倒しになり、ドライバーの帰社、帰宅時間が早まった。時間的余裕から顧客との会話が増えたとの報告もある。

 ■バス運送の価値高く■

 中山間地域の住民にとって路線バスなどの公共交通は、通院や通学、買い物などに欠かせない。一方、そうした地域でバスや鉄道を維持する関係機関の負担は増すばかりだ。宅配など運送事業者も、採算性や近年のドライバー不足から物流網の維持に苦慮している。

 国土交通省は昨年9月、自動車運送業の規制を緩和。旅客と貨物の運送に特化してきた各業者が、事業許可を取得すれば、人とモノを同時に運ぶ「かけもち」ができるようにした。物流の効率化による労力削減や人材確保、二酸化炭素の排出削減など多面的な狙いがある。

 表には見えない効果もあるようだ。福井鉄道はモノも運ぶことで、バス運送の価値が高まり、社会的な役割をより多く果たせると受け止めている。

 路線バスへの公的補助は収益が増えれば削減される。赤字補塡(ほてん)の意味合いから自然で関係自治体のメリットでもある。

 ただ、損益の改善分が全て補助削減で相殺されては、交通事業者の創意工夫に水を差しかねない。地域交通の持続可能性を高めるため、行政には数字だけで計らない支援を願いたい。

 ■農産品や郵便物も■

 ヤマト運輸は2015年から、さまざまな形態の貨客混載に取り組み、池田のケースは全国で12道県目になる。全国津々浦々を走るドライバーが気づいた地域課題に何かできないか声を上げたのが発端という。

 岩手や長野、茨城県では特産の果物や野菜を産地から消費地へ運ぶのに急行バス、路線バスが活躍している。宮崎県では混載に日本郵便が加わり、郵便物を路線バスで運んでいる。

 県内でも奥越や嶺南地域を走るバスで取り組めないか。条件付きだが、タクシー、トラックも人、モノを運べるようになった。観光客の荷物を配送するなど可能性を広く探りたい。

 池田町では19年度末に武生高池田分校が閉校となる。通学生の大幅減はバス路線の維持に大きく影響する。地域にとって重要な課題であり知恵の絞りどころだ。

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