【越山若水】わが家は、ひな人形が年に2回登場する。まず、3月3日の桃の節句。娘が生まれたとき義母からいただいた品だ。もう1回は4月で、半世紀ほど前からあるものを母親が出してくる▼昔から旧暦で飾る習慣が身に付いているらしく、五月人形もひと月遅れ。正確な日付にこだわっている様子はない。思い立ったときに並べ、片付けている▼新暦であっても五節句の祝いは味わい深いが、春の七草が真冬に入り用になるように季節感のずれは避け難い。9月9日の重陽(ちょうよう)は特にそうである▼菊酒、菓子、飾り物と、行事の主役は菊なのだが香りがまちに漂うのはまだ先。旧暦ならば今年は10月17日に当たるらしく、国内有数の菊の祭典・たけふ菊人形がにぎわう頃だ▼重陽で主役となる植物がもう一つ。高浜町で特産化が進む漢方薬の原料の呉茱萸(ごしゅゆ)である。邪気をはらう願いが託され、江戸期の絵師酒井抱一(ほういつ)の「五節句図」には実を入れた茱萸嚢(のう)が描かれている▼今年、町内から京都の石清水八幡宮に供物として奉納される。県外の神社関係者が茱萸嚢復活を考え、高浜に問い合わせてきたのがきっかけになった▼伝統の節句を彩る植物二つが福井県にかかわりが深いとはうれしい話。重陽の行事は現代は薄れているが季節の変わり目を昔ながらに祝いたい、という気持ちに共感が広がるといい。暮らしを楽しむ知恵でもある。

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