【越山若水】北海道で大地震の発生が迫っているとされたのは東部。だが、きのう起きたのは札幌に近い胆振(いぶり)地方だった。それだけ地震予知は難しいと思うしかないのだろうか▼テレビ画面に映し出されたのは、尾根筋を残して茶色く崩れた山々。そして、押しつぶされた家々…。未明に不意を突かれた人々の心中を思うと、言葉がない▼台風21号による雨で山肌が緩んでいたところを、震度7で揺さぶられてはたまらない。70年前の福井地震、その後に起きた水害とは逆の複合災害なのかもしれない▼さらに身につまされるのは停電である。道内約295万の全戸で電気が使えなくなった。一つの火力発電所の停止が全道へ波及したというから、現代社会は何と脆(もろ)いことだろう▼灯火や家電をはじめパソコンやスマホも使えない。必要な情報が入らない状態は、暗闇を手探りで行くようなものに違いない。普段の便利は非常時の不便、と暗い気分になった▼同僚との雑談で、ことしは天災のフルコースだとぼやき合った。当事者になった豪雪に豪雨、酷暑、台風、大地震。いつも日本列島のどこかで、誰かが泣かされている▼不安に駆られたところで、ドナルド・キーンさんを思った。骨を埋める覚悟で6年前に日本国籍を取ったのは、東日本大震災がきっかけだった。天災にもくじけない日本人とともに生きたいと思ったのだという。

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