【論説】南米ベネズエラの経済危機が深刻の度を極めている。ハイパーインフレで日用品の入手は困難となり、食料や医薬品が逼迫(ひっぱく)。国民の国外脱出が国際問題となっている。反米政権に対し米国が経済制裁を続ける中、国際社会による人道支援は待ったなしの状況だ。

 ベネズエラ政府は8月20日、通貨ボリバルからゼロを五つ取って10万分の1に切り下げるデノミネーション(通貨呼称単位の変更)を実施した。長く続くハイパーインフレの対策だが、効果は疑問視されている。デノミに合わせ最低賃金も引き上げられることから企業が値上げを余儀なくされ、物価がさらに上昇すると予想されるためだ。

 同国は原油確認埋蔵量が世界一で、南米で最も裕福な国とされていた。しかし社会主義的政策の行き詰まり、原油価格下落、人権状況を理由とする米国の経済制裁などから頼みの石油輸出がままならなくなり、多くを輸入に頼っていた生活必需品が欠乏。インフレ率は、野党勢力の発表によると6月時点で4万6千%を超えた。さらに国際通貨基金(IMF)は、今年末までにインフレ率が100万%に達すると予測。にわかに信じがたい数字だ。

 電力不足から、停電や断水も頻発。病院で水が使えなかったり、冷蔵庫が動かないため腐った肉を人々が買い求めていたり、といった状況も伝えられる。治安も悪く、海外NPOの調査では首都カラカスは殺人発生率が世界で最も高い都市の一つ(紛争地域を除く)。8月には大統領暗殺を狙ったとされるドローン爆発事件が起きた。国連は2015年以降、160万人以上が国外脱出したと推計している。

 先進7カ国(G7)は5月、「人道支援にコミットしていく」との首脳声明を発したが、現地などでは支援を名目にした米国の介入を警戒する見方も根強い。そんな中で河野太郎外相は8月、エクアドル、ペルー、コロンビアなどを歴訪。各国外相と会談し、難民問題を含むベネズエラ情勢について、懸念の共有、緊密な連携などを確認した。同国は人道支援を受け入れておらず、当面、周辺国と連携した難民支援が重要である。日本が果たせる役割は大きいはずだ。

 ベネズエラは日本の原油輸入先でもある。米国がけん引し、世界経済は好調に見えるものの、その陰でトルコ、アルゼンチン、インドなど、通貨下落や対外債務返済不安といった問題を抱える新興国、途上国が増加。ベネズエラも中国などに債務を抱えている。米国が仕掛ける貿易戦争の先が見えない中、経済の不測の事態に備えるためにも、積極的なかかわりが必要ではないか。

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