【論説】就農による移住を進めようと、希望者の育成を図る小浜市の「おばまアグリスクール」事業が3年目を迎えている。地道ながらも移住促進は着実に進んでいる。スクール1期生が本格移住へ独立農家を目指している一方、本年度からは各機関が連携した人材育成組織が始動するなど、基盤が整いつつある。定住には「稼げる農業」が必須だけに、希望者がレベルアップを図れるよう支援体制をさらに磨き上げてほしい。

 市によると、市内の農業就業人口は、1995年に1955人だったが、2015年には645人と3分の1に減少した。高齢者の占める割合は8割に上っている。耕作放棄地は15年時点で214ヘクタールで、05年に比べ1・6倍に膨れ上がっている。

 同スクールは、国の地域おこし協力隊制度を活用し、都会から移住する就農希望者を募ろうと16年度に始まった。同協力隊として受け入れるため、3年間、国からの補助により人件費や活動費を賄える。いきなり都会から来て農業をするのは収入面で難しいが、同スクールにより安定した収入を確保した上で習熟に励めるのがメリットだ。

 初年度に2人、昨年度に1人を受け入れた。まだ3人だが、第1期生の30代男性は既に独立農家を目指し奮闘している。同市口名田地区で地元農家の指導を受けながら、畑を借りさまざまな園芸作物を栽培している。高齢化の激しい同地区では、若者が加わったことで活気が出たとの喜びの声も上がっているという。

 そもそも、収入確保は移住者に限らず、現在の農業に共通する課題。6次化など付加価値の向上は全国各地で取り組まれており、そうした中で克服していくのは簡単ではない。「高付加価値の商品を生み出し、都会へと販路を拡大する」という、開発力、営業力、経営力を、個人個人が身に付けることが重要となっている。

 市は本年度、県、JA若狭、福井銀行などと連携し「市食と農の人材育成センター」を設置。スクールの支援や薬用作物振興のほか、▽商品開発▽経営能力アップ―などをテーマにしたスキルアップ研修を始めた。スクール生をいかに育成するかという課題から生み出された事業だが、スクール生のみならず、地元の農業者にも有益な取り組みだ。

 小浜といえば小鯛(こだい)の笹漬(ささづ)け、サバのへしこなどの海産物が知られるが、農業でも国の「地理的表示保護制度(GI)」に登録された「谷田部ねぎ」など付加価値の高い作物がある。農業は地域間競争が激しい分野だが、移住者という新しい力を起爆剤に、市内の農業全体の底上げを図ってもらいたい。

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