【論説】スマートフォンのオンラインゲームなどのやり過ぎで、日常生活に支障を来すゲーム依存が深刻になっている。世界保健機関(WHO)はこうした状況を「ゲーム障害」と定義し精神疾患の一つに認定。来年5月の総会で正式決定する。

 スマホは今や小学低学年や未就学児童に普及し、障害がますます拡大する懸念がある。また「eスポーツ」というビデオゲーム競技も爆発的人気で、のめり込む若者が増えている。

 ゲーム業界は、WHOの決定を時期尚早でイメージ悪化を助長すると反対する。しかし現実には生命に関わる事態も頻発している。実態把握や治療法の確立など課題は多く、疾病対策の強化は急を要する。

 ■2~3%に障害恐れ■

 WHOが示す「ゲーム障害」の診断ガイドラインは、(1)ゲームの頻度や時間をコントロールできない(2)日常生活でゲームを最優先させる(3)人間関係や健康などに問題が起きてもゲームを続ける―という3条件。こうした症状が1年以上継続または繰り返すと、障害の可能性があると定める。

 発症するのは「ゲームをしている人の2~3%とみられる」と指摘した上で、ギャンブルやアルコールの依存行動と同じ精神疾患と位置づける。

 厚生労働省研究班の2012年度調査で、インターネットの「病的な使用」が疑われたのは中高生で8%、約51万人と推定された。それが昨年度には少なくとも93万人と5年間でほぼ倍増。総数約650万人の14%、7人に1人の高い割合だった。予備軍も含めると254万人がネットにはまっていた。

 ■治療体制まだ不十分■

 ゲームに没頭するあまり、食事を取らず夜更かしを続ける。睡眠障害で学校を休んだり健康を損ねたりする。不登校や引きこもり、家庭内暴力に発展することもある。ゲームに勝つ達成感を求め、アイテム購入にお金をつぎ込むケースもある。

 11年に日本初のネット依存専門外来を開設した国立病院機構久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)では、受診者の9割はゲーム依存、年齢層は7~8割が中高大学生だ。しかし最近は小学生も訪れるという。

 年間に1800人ほどが受診し、カウンセリングやスポーツなどでゲームから距離を置く環境をつくって治療を行う。ただ国内の専門治療機関はここしかなく、今年も10月末まで予約で満杯。事態の深刻さに比べ、体制はまだ不十分といえる。

 ■米国では銃撃事件も■

 オンラインゲーム大国の韓国では、02年以降ネットカフェで数日間休まずプレーし死亡する若者が相次いだ。大きな社会問題となり、時間を制限する措置が導入された。

 さらに先月末、衝撃的な事件が起きた。米国フロリダ州で開かれた「eスポーツ」大会。過去に優勝経験のある男が、ゲームに敗れた後に拳銃を乱射し2人が死亡、11人が負傷した。

 eスポーツの競技人口は1億3千万人、視聴者は3億8千万人に上るという。人気を反映し「プロゲーマーになりたい」と話す若者も多く、五輪種目に採用する動きもある。

 ゲーム業界は産業育成の観点から、WHOに認定の見直しを求めている。障害と定める証拠がなく、判定基準も曖昧という理由だ。しかし現実に目を向ければ、事態は深刻で、解決すべき課題は山積みである。

 実態把握は不十分、治療体制も弱い。発症原因や治療法、薬剤の研究は道半ば。青少年教育も万全ではない。個々の思惑を超え、相互に協力し合うことこそ重篤化を防ぐ最善策で、解決の早道だろう。

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