【論説】米朝非核化交渉の行き詰まりが鮮明になっている。朝鮮戦争の終戦宣言を巡る両国の主張は平行線を続けており、ポンペオ米国務長官の訪朝が直前に中止されるまでに至った。非核化を後戻りさせないために米国は中国を含む国際連携を強めるべきだが、貿易問題の米中対立は当面、解けそうにない。先行きはいよいよ見えなくなっている。

 6月の首脳会談をトランプ大統領は成功と誇示し、非核化進展に楽観的な発言を続けてきた。しかしここへきて、その見方を撤回。非核化の停滞を認め、不満を募らせているとされる。

 直接の契機は24日に届けられた北朝鮮の書簡。非核化交渉の「崩壊」に触れた脅しとも取れる内容とされ、トランプ氏は即刻、ポンペオ氏の訪朝中止を指示。国務省が同盟国大使館に長官訪朝を説明したわずか10分後の決定だった。トランプ氏は、ポンペオ氏訪朝が実現する時期について「中国との貿易問題が解決した後になる」との考えも示しており、長期戦を示唆したとも受け取れる。

 北朝鮮が終戦宣言にこだわるのは、できるだけ早期に在韓米軍を撤退させるためで、「戦争が終結していないうちに核放棄などできない」とも主張しているとみられる。一方、米国にしてみれば、非核化が具体化しない段階での撤退はもともとのめる話ではない。ただ、米国の報道では、首脳会談の際にトランプ氏が、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長に終戦宣言早期署名を口頭で約束したとの話がある。これが事実なら、問題を複雑にした要因ともいえる。

 両国とも交渉決裂を望んでいないことは、現状のわずかな救いだ。トランプ氏は、米韓合同軍事演習が再開されれば「過去にない大規模になる」と警告してみせながらも、非核化停滞は「中国が非協力的だから」として、金氏への直接の非難は避けている。米朝首脳再会談への意欲も表明、自らの外交努力を続ける姿勢を示した。

 北朝鮮も、拘束していた日本人を異例の早さで解放した。その思惑についてはさまざまな見方が出ているが、少なくとも、この問題が長引けば日本だけでなく対米関係にも影響したはずで、それが回避されたことにはなろう。

 米朝再会談は、9月後半のニューヨークでの国連総会や、11月にシンガポールである東アジアサミットなどの場が取り沙汰されている。北朝鮮はこれらのタイミングを控えた9月9日の建国70年行事に、中国の習近平(しゅうきんぺい)国家主席が出席することを目指しており、中朝の結束アピールを図ろうとしている。米国も、北朝鮮担当特別代表を近く日韓に派遣。ポンペオ氏訪朝中止後の対応を日米韓で共有することにしている。当面、関係国の動きから目が離せない状況が続く。

 ただ気掛かりなのは、建国70年行事の軍事パレードの内容だ。もしも大陸間弾道ミサイル(ICBM)を登場させるようなら、非核化交渉の仕切り直しにもつながりかねない事態となる。

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