日本―サウジアラビア 前半、攻め込む岩崎=ボゴール(共同)

 当たり前だが、年齢や性別が違っても試合に勝つために不可欠な要素は変わらない。それは、サッカーの普遍的な原則。まず、優れたGKがいて守備が堅い。そして、チャンスがあれば迷いなくゴールを狙う。フランスで開催されていたU―20女子ワールドカップ(W杯)で美しい優勝を果たした「ヤングなでしこ」の戦いぶりを見ていて、改めてそう思った。

 日本人として、誇らしいと思えるチームだった。集団としての意思統一が取れ、完成度が高い。そして、戦う姿勢が画面を通しても伝わってくる。

 2011年の女子W杯でフル代表「なでしこジャパン」が成し遂げた初制覇のときもそうだったが、日常生活を送る中で忘れてしまいがちな感動をなでしこたちからはもらえる。プロとして恵まれた待遇を受ける男子代表とは違い、代表とは言え女子選手が置かれた環境は必ずしも良いものではない。それを物ともせず世界の舞台で好成績を収めることが、女子サッカーの立場を向上させることに直結していることを各選手が自覚している。だから、気持ちが前面に出たプレーができるのだ。それが人々の心を打つのだろう。

 決勝で相まみえるのは、スペイン。グループステージで、今大会唯一となる敗戦を喫した相手だ。試合内容を見れば、スペインが押し気味のゲームだった。しかし、選手たちは諦めない。ピンチでは相手に体を寄せてシュートコースを限定し続けた。それでも招いてしまった決定的な場面には、GKスタンボー華が「最後のとりで」の言葉を証明するような素晴らしいプレーでしのいでみせた。特に前半23分、マイテが放ったミドルシュートを弾きだしたダイブは、「ファンタスティック」としか表現しようのないビッグセーブだった。

 劣勢でも失点さえしなければ、チャンスは訪れるものだ。果たして、日本は前半38分に先制する。宮沢ひなたが放ったミドルシュートには「自らが決める」という強い意思が込められていた。そして、後半12分に宝田沙織が試合を決定づける2点目を決めると、わずか8分後には長野風花が勝利を確信に変えるダメ押しの3点目を挙げた。その後、1点は返されたが、すべての得点が理想的なタイミングで積み重ねられた。

 3―1のスコアだけを見れば、楽勝に見える。しかし、日本が先に失点していたら、スペインが優勝の栄誉を勝利していたとしても不思議はなかった。その押され気味の試合を巧みなゲーム運びで勝利をたぐり寄せることができたのは、ヤングなでしこの選手たちがサッカーをよく知っている「本当に強いチーム」だったからだろう。

 一方、ボール支配率では日本を圧倒していたスペインを見ていると、アンダーカテゴリーの男子の日本代表がアジアで戦う姿に、ダブって見えた。ボールを保持しているのにもかかわらず、結果は敗れてしまう。ところが、日本の指導者たちは「良いサッカーをしていたから」と“評価”する。果たして、それは正しいのだろうか。

 本当に良いチームというのは、劣勢を耐え、数少ないチャンスを得点に結びつける力を持っているものだ。そして、試合を自分たちのものにしてしまう、U―20女子W杯を制したヤングなでしこはまさにそんなチームだった。その意味で、池田太監督が育て上げたU―20女子日本代表は疑いなく強いチームだった。

 完成されたヤングなでしこを目にすると、森保一監督率いるU―21男子日本代表の「急造感」は否めない。それでもアジア大会での当初の目標をクリアしたといえよう。2年後の東京五輪は地元開催なのでアジア予選が免除されるため、1試合でも多く公式戦をこなしたい日本は、準決勝でアラブ首長国連邦(UAE)を破って、決勝に駒を進めた。これで、今大会最大の7試合を経験できることになったからだ。

 今大会のU―21日本代表を見ていると、狙いを持ってプレーしている選手と、その意識が希薄な選手の差がある気がする。そのなかで2―1で勝利した準々決勝のサウジアラビア戦で、全得点をたたき出した岩崎悠人(J2京都)は面白いプレーを見せている。

 1トップの前田大然(J2松本)の後ろに位置する2シャドーを担う岩崎は、自分の役割が点を取ることだというのを理解している。その意識の高さが見えたのは、サウジアラビア戦前半5分のプレーだ。左サイドを突破し一度はDFに背中を見せたが、そこから左回りでターンをすると、ノールックから右足でファーポストを狙ったシュートを放った。

 W杯ロシア大会のセネガル戦で乾貴士が決めた、いわゆる「巻く」キック。岩崎のシュートはGKに弾かれたが、入らなくても何を意図したかが分かる。そして考える選手は必ず進歩する。

 ボーっとプレーしていてはいけない。何を表現するかを考えながらプレーすれば、見る者には伝わる。残念ながら、ここまでのU―21日本代表は人の心に響くような試合を見せられていない。もちろん結成されたばかりのチームというのはある。それでも、宿敵・韓国と戦う決勝では印象に残る試合を演じてほしい。ヤングなでしこによる見事な世界一を見た直後だけに、その思いが強くなった。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はロシア大会で7大会目。

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