【越山若水】宅配便をこんなに身近にした功労者の一人は、ヤマト運輸のトップだった故小倉昌男氏だろう。強大な権限を持つ霞が関に立ち向かい、規制緩和を勝ち取ってきた▼氏が会社を退いた後も気骨は引き継がれた。16年前の業界誌に、幹部が役所を痛烈に批判する記事があった。「公僕という観念が全くない」と歯に衣(きぬ)着せない▼彼らは組織を守ることしか考えていない、「官尊民卑」の思想に貫かれている、とも。びっくりするほどの激しさだが、いまとなってみれば率直な指摘にうなずく▼国の33の行政機関が雇用する障害者数の水増しは3400人超に上っていた。法定雇用率の半分ほどしか満たさず、各省の大臣らトップが軒並み謝罪する羽目になってしまった▼民間企業だと、法定雇用率に届かなければ懲罰的な「納付金」が課される。一方の役所には間違いはないというわけか、そんな規定はない。「官尊民卑」の不遜さが垣間見える▼もちろん、一番怒っていいのは障害のある人たちだ。水増しは長年にわたっており就業機会を奪われた人が相当な数に上るはずだから。霞が関の罪はあまりにも大きい▼実は、冒頭の小倉氏は障害者の自立や社会参加にも熱心だった。退社後には個人資産の大半を投じて福祉財団を設立している。率先して障害者を雇用するどころか不正を続けてきた官側に、合わせる顔はあるか。

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