【越山若水】人間が意思決定をするとき、得てして直線的思考に判断を任せるという。正解を導くために考える手間をかけるよりも、ぱっと頭に浮かんだことを優先するらしい▼例えば救急ばんそうこうを買う場合。店頭で「パッドの気泡が傷を早く治す」と宣伝している。さすがにこれでは「どんな仕組みだろう」と疑問が生じるだけ▼そこで「気泡によって空気の循環が良くなり、細菌が死滅するから」と説明を加える。理由としては表面的だが、お客さんは理解した気分になり購入者が増加した▼しかしもっと詳細に「空気中の酸素が細菌の代謝プロセスを妨げる」などと追加したら、消費者の評価はむしろ悪化したという(「知ってるつもり 無知の科学」S・スローマンほか著、早川書房)▼どうやら大多数の人間は「説明嫌い」で、賢い選択のために細部を知ろうとする「説明マニア」は少数派のようだ。同じような空気がなぜか、自民党総裁選にも漂っている▼遅ればせながら、安倍晋三首相が3選出馬を表明し、石破茂元幹事長と一騎打ちになりそう。熱い論戦を想像したら、首相は期間中に訪ロの予定とか▼選挙戦は実質1週間程度。首相側は有利な情勢を受け、あえて議論を尽くさない「説明嫌い」の作戦か、それとも「説明マニア」の石破氏の戦意をそぐ戦法か。ただ国のトップを決める選挙としては寂しすぎる。

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