【論説】関西電力大飯、高浜原発で同時に事故が発生したとの想定で行われた原子力総合防災訓練。国主導の訓練で190機関約4300人、住民は県内、滋賀、京都の3府県約1万7千人が参加した。おおむねシナリオ通りの訓練結果となったが、万一の際に生きる訓練だったのか。検証を加え実効性を高める努力が求められる。

 懸念されるのは、高齢者や施設入所者ら要支援者の安全確保。搬送訓練では施設の職員らが要支援者役を務めたが、当事者にとっては事故が起きて初めて本番を迎えることになる。

 国会事故調報告書によると東京電力福島第1原発事故では、20キロ圏内の7病院から850人の入院患者が避難、1カ月以内に60人が亡くなった。各施設からの避難で死亡した高齢者はその数倍との報告もある。

 福島事故では、放射性物質が想定外に拡散し、国が方向を把握、指示できず、流れた方向に避難する住民が大勢に上った。大渋滞となる中、遠方避難という過酷な状況下に置かれた高齢者、災害弱者が犠牲になった形だ。

 訓練ではバス輸送が大半で、マイカー避難は一部だった。実際の事故ではマイカーが主になるとみられる。今回は舞鶴若狭自動車道による避難経路が取られたが、地震で通行不能になる可能性も否定できない。国道27号などを使う経路は大渋滞となる恐れもある。

 さらには、海水浴シーズンなら、全く身動きの取れない事態も想定される。北西の風が強く吹く冬場は、関西方面への避難は避けなければ、福島事故と同じような結果につながりかねない。

 2年前の高浜原発事故訓練では、悪天候で大型ヘリによる半島の住民搬送は中止されたが、今回はヘリに加え艦船などもフル出動できた。ただ、23日夜から24日未明に県内を襲った台風20号が訓練当日だった場合は、訓練そのものが中止に追い込まれていただろう。地震や災害は時や場所を選ばない。想定外をいかに想定するかが、防災計画、訓練の肝といえる。

 ヘリが着陸しているのに、要支援者に対する避難指示を知らせるメールや防災無線が流れるなどした点は課題の一つだろう。訓練の円滑化は必要だが、シナリオありきでは住民の主体的な避難にはならない。ただ、避難指示だけで行動を促せないことは、西日本豪雨でも明らかであり、住民第一としたきめ細かな情報発信が欠かせない。

 そんな中、同時事故の想定に対して、原子力規制委員会の新規制基準を全否定すると捉える向きがあるのはいかがなものか。確かに多重防護など厳しい審査をクリアし再稼働に至っていることは事実だ。だが、津波を「想定外」として過酷事故を生んだ福島事故を思えば、「起こり得ない」はないはずだ。規制委自体も「安全とは言わない」(田中俊一前委員長)との立場を取ってきた。「安全神話」の再来は避けなければならない。

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