【論説】米国と中国の貿易を巡る対立がエスカレートを続けている。世界経済が堅調な中にあって、両国の貿易戦争はいまや最大の波乱要因である。特にトランプ政権による対中制裁関税は、不公正貿易解決のためというより、国内向けのポーズとして発動されている側面があり、対立の先行きは不透明感が増すばかりだ。

 米政権は、対中貿易赤字を目の敵にしている。次世代情報技術やロボット、航空宇宙などの分野で世界トップを狙う中国の長期発展戦略「中国製造2025」に対する警戒も強い。

 このため米国は、中国製品に対する制裁関税を発動してきた。理由として、外国企業に対する知的財産権侵害や中国で事業を行う場合の技術移転強要など、問題が多い中国の商慣習をやり玉に挙げた。これまで2段階に分けて500億ドル(5兆5千億円)相当の中国製品に対する追加関税を発動、第3弾(2千億ドル相当)も予定している。これに対して中国も同規模の報復関税を繰り返してきた。

 米中の貿易協議は最初からこじれていたのではなかった。5月には共同声明を発表。米国の対中赤字を「相当削減する」ことで合意し、知的財産権の保護強化も盛り込まれた。実際、中国は直後に米国などからの輸入自動車関税引き下げを発表した。

 ところが6月、米政権はこれら交渉成果をほごにして追加関税発動を表明。問題解決を自ら遠のかせるようなトランプ氏の手法が中国側の不信を呼んだ。これでは、中間選挙をにらんで「米国を犠牲にする不公正貿易と戦っている」姿を支持者に見せようとしている、とみられても仕方ない。

 米国が中国以外の多くの国からの輸入品も関税を引き上げているのに対し、中国はしたたかな手を打つ。米国主要産品の自動車、大豆に報復関税を課す一方、米国以外からの輸入は関税を引き下げた。

 結果的に米政権の手法は国内消費に影響を及ぼし、自国産業を販売落ち込みやコスト高、販路喪失の危機にさらしている。習近平(しゅうきんぺい)指導部の求心力向上を最優先とする中国は、貿易摩擦長期化に備えた景気対策を打ちつつあるとされ、譲歩する気配はない。米政権は成果を上げられないだけでなく政策のデメリットばかり目立つのが現状だ。

 ただ、それでも共和党支持者の間では、制裁関税の評価が高いという。ロシア疑惑や不倫もみ消し疑惑で窮地に立つトランプ氏は、中間選挙を前に政策転換を図ることはしないだろう。米国経済の好調さもトランプ氏の強気を支えている。

 両国の対立を解決するのは、常識的には国際社会による話し合いだ。しかし、貿易問題の手段と目的を取り違えているかのような米政権に冷静さは期待できない。日本が今できるのは、欧州や東南アジアなど、他の地域との関係構築・拡充に努めておくことだろう。米国との経済関係はもちろん最重要だが、「トランプリスク」はもう無視できない。

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