犯人逮捕訓練で組み手の実技に励む村中さん(左)と山根さん=8月9日、福井県福井市の県警察学校

 県民の生活を守る-。この一言では表せないくらい警察官の仕事は幅広い。事件事故の捜査、VIPの警護、交通取り締まり、落とし物の管理、困りごとがあれば相談にも乗る。その警察官たちが最初に必ず通る道が警察学校だ。警察官としての自覚や責任感をどう培うのか。7月中旬に体験入校し、一緒に汗を流す中で、2人の生徒からそのルーツを垣間見ることができた。

◆事件がきっかけ

 今年3月に大学を卒業した村中亮介さん(22)が警察官を志望したのは、一つの事件がきっかけだった。

 大学2年生のころ、オートバイで通学中にひき逃げ被害に遭った。現場に倒れ、走り去る車をぼうぜんと見つめ、惨めさを感じていたとき、通報を受けた警察官がすぐに駆けつけてくれた。それから10分もしないうちに、容疑者確保の知らせ。「安心感と尊敬の気持ちでいっぱいになった」と振り返る。

 体験入校したこの日、現場対応訓練の想定は、くしくも「ひき逃げ」だった。事件発生後に交番から駆けつけ、目撃者らから手際よく事件当時の詳しい状況を聞き出す-という流れ。教官が目を光らせる中、テンポ良く、しかし答えを誘導することなく情報を引き出すなどし、現場対応力に磨きをかけていく。

 「誰にもつらい思いをさせたくない。早く現場に出て、被害者になった“経験”を生かし、県民の皆さんのために貢献したい」。訓練を重ねる中で、村中さんの思いはさらに強くなっている。

◆二度と起こさぬ

 山根義大さん(28)は大学卒業後、障害者の就職支援などを担う福祉関係の仕事に6年ほど携わり、警察官への転職を決意した。

 転機は2016年7月、神奈川県相模原市の知的障害者施設で入所者らが殺傷された事件。「同じような仕事をしている身として、悔しかった。二度と起こらないようにするために、警察官になるしかないと思った」。子どもの写真を取り出しほほ笑んでいた、ついさっきまでの表情とはまるで違う正義感あふれる顔つきに変わっていた。

 だが、厳しい訓練を一日とはいえ体験していると、優しさや正義感だけで警察官が務まるわけではない、ということも感じた。

 瞬時に警棒を取り出す技術や、相手との間合いの取り方などを学ぶ逮捕術の授業。整列する生徒を前に教官は「相手が迫ってきて脚が震えるような状況でも、警察官はそれを気付かれてはいけない。声で威圧しろ。自分の命は自分で守れ。自分の命を守ってこそ県民の命を守れるんや」と教えていた。

 「犯罪を未然に防ぐ警察官になれるよう公安関係、テロの抑止に関する仕事で県民の役に立ちたい」。山根さんは目標に向かって、日々鍛錬に励んでいる。

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