【越山若水】「五風十雨」という中国伝来のことわざがある。5日ごとに風が吹き10日ごとに雨が降るような天気なら、農作物は豊かに実り世の中は安泰という意味で使われる▼ところが最近は、そんな順調で穏やかな天候とは程遠い状況。地球温暖化の影響か、日本列島は酷暑に少雨、かと思えば、集中豪雨と異常気象が続発している▼そしてきのうは台風の襲撃である。四国、近畿を通り過ぎ日本海へ抜けた台風20号は、県内を暴風域に巻き込んだ。小浜市では工場の屋根が丸ごと吹き飛ばされた▼古来、わが国では秋にやって来る台風を「野分(のわき)」と呼んだ。立春から二百十日前後、野の草を分けるほど強く吹く風という名称だ。平安文学を代表する紫式部の「源氏物語」にもその言葉が登場する▼「野分、例の年よりおどろおどろしく、空の色変はりて吹き出(い)づ」。その年の台風は特別にすさまじく、大木の枝は折れ、六条院の御殿の瓦まで飛んだと惨状を書いている▼そこで「大空に覆ふばかりの袖もがな春咲く花を風にまかせじ」の歌を引用。大きな袖があれば、前庭の丹精込めた秋の草花も守れたのに…と嘆いた▼紫式部に倣えば、今年は「例の年よりおどろおどろし」い天候だ。福井豪雪に始まり大阪北部地震、西日本豪雨と災害が相次いだ。無理は承知ながら、これ以上の天変地異が起きぬよう、大空を覆う袖が欲しい。

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