後を絶たない学校でのいじめを解決するための具体的な提言の書である。

 その核心は、いじめが道徳観の欠けた問題児の逸脱行動によるものではなく、子ども世界に潜在するルールの結果として構造的に生みだされていると見る点にある。

 子ども世界には「子ども法」とも呼ぶべき仲間内の掟があり、その掟に違反した者に与えられる制裁がいじめだ。問題は子ども法の世界が外から見えないことにある。だから被害者は一人苦しみ、自殺にまで追い込まれてきた。

 著者は子ども法をつくる地下活動を可視化するため、子どもが自分の思いを訴える「広場」を教室につくることを提案する。みんなの前で当事者同士が話し合う場を子どもたち自身が運営し、相互理解に導くというイメージだ。

 訴えを保障するため「仕返し」には厳しいペナルティを課し、場合によっては学校の外、司法の手に委ねることも想定する。つまり広場は大人の世界につながる「公共の場」であり、子どもを「法の人」として育てる役割を担う。

 そんなことが可能なのか? 江戸時代のムラ社会には子どもだけで物事を決める「子ども組」があり、現代米国では青少年を陪審員とする「少年法廷」が成果を得ている。著者は古今東西の文学作品を読み解いて、いじめが人類普遍のテーマであることを示し、解決への実践例を紹介する。

 子どもを傷つけるのが子どもなら、子どもを守るのも子どもの力だと著者は言う。問われるのは子どもの力を信じる大人の力だ。

(言視舎 1700円+税)=片岡義博

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