中村美律子『弥太郎鴉』

 デビュー33年目のシングル第1弾。最近は、しっとり女性らしい歌が多くなっていたが、本作では久しぶりに彼女の真骨頂でもある男歌が堪能できて、セールスの出足も好調だ。

 表題曲は大衆演劇でも人気の題材『関の弥太っぺ』をベースとした、独身男性が主人公の股旅モノ。曲調は『浪花節だよ人生は』のようにノリが良く、各コーラスの中盤に出てくる「おひけぇなすって」の勇ましい声の前後で、中村が主人公としての男性から語り部としての女性にチェンジして歌い分けるのも上手い。

 カップリング曲『忠治旅鴉』の方は、『名月赤城山』をベースに国定忠治が赤城山で追い詰められる様子を描いたマイナー調の演歌。“赤城の山も今宵限りか”という有名な場面の悔しさや寂しさが中村の歌唱に滲んでいて、ここにも熟練の技を感じる。得意の台詞が入っても良かったかもしれない。

 歌の内容に合わせて振り切ったコスプレ(?)までしてしまうのも彼女らしい。本作を聴けば、いつもより素直な感情をアピールしたくなるはず。

(キング・1204円+税)=臼井孝

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