【越山若水】8月は命の貴さを思う月。ことしも6日に広島で、きのうは長崎で原爆忌の式典があった。ともに「平成で最後」。昭和と合わせ二つの世を経た厳粛さに打たれる▼その狭間(はざま)で接した訃報である。沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が亡くなった。政治家として働き盛りの67歳。老練な印象と裏腹の若さに驚き痛みのようなものを覚えた▼生粋の保守政治家ながら国と激しく対立してきた。転機は2013年1月の東京行動だったのではないか、と地元紙の沖縄タイムスのコラム「大弦小弦」にあった▼輸送機オスプレイの配備撤回を求める「沖縄の総意」を示す東京行動だった。那覇市長だった翁長氏ら県内全首長が銀座をパレードすると、沿道から「売国奴」の罵声を浴びた▼「琉球人は日本から出て行け」との声も飛んだ。露骨な沖縄差別だった。その衝撃が、知事選に立つ動機の一つになった。掲げたのは「イデオロギーよりアイデンティティー」▼沖縄の人が「ヤマト」と呼ぶ日本本土の私たちは、米軍基地問題に無頓着だ。普天間飛行場返還に伴う名護市辺野古への基地建設にも関心が薄い▼「ウチナーンチュ、ウシェーティナイビランドー」。基地建設に反対し翁長氏が放った方言である。沖縄人をないがしろにしてはいけない、との語釈が付いたが「なめるな」の響きがあるそうだ。文字通り、命がけの抗議だったのだ。

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