3人のマリコの仕事にまつわる日々を描いた『マリコ、うまくいくよ』。著者はご存じ、気づけばずいぶん売れっ子、益田ミリ。

 社会人2年目、12年目、20年目。同じ職場の3人のマリコたち。彼女たちの、ふんわりとした、しかし切実な悩みや、迷いや、怒りや、共感や、浮かんでは消える名前のつけようがない数多の感情を丁寧に描いている。

「会社で働くって、思っていたより楽だった(2年目マリコ)」「『音姫』では消しきれぬ若い尿の勢い!!(20年目マリコ)」「ガンバレ、ガンバレ、大人の世界に負けないように」「けど、そう簡単に、会社に、社会に、なじんでもらっちゃ、癪にさわるんだよね〜〜〜〜〜〜(20)」「若くないし!!40過ぎてるし(2)」「こざかしい正解より必死さのほうが大事だろーが!!(12)」「おばさんぽくはなりたくないな、と思う一方で、会社での自分の立ち位置が確保されていることが、今はすごく、うらやましい(2)」「へーーーーーーーー(12)」「会社帰り、スタバで超激甘のもん飲も!!(12)」「どうしてとしをとった人たちは、若い世代を気の毒がりたいんだろう」「てか、うちらを仮想敵にでもしてんのか?(2)」「おい、こらババア(12)」……。

 物語は、ほとんど動かない。3人のマリコたちの心の中だけがせわしなく動き、大きな展開はなく、あるとしても会社の、社会の花形である男たちが動かしている。だからマリコたちは行き場のない思いを心のなかに溜める。女を若さと美しさで判断する男たちへの怒りと、その一方で歳を取り、男たちから切り捨てられることを恐れる自分への怒り。自分よりも年上の「おばさん」への苛立ち、若者へのモヤモヤ。

 物語は終盤、小さな事件が起き変化が訪れる。しかし、その結末はあまりにリアルで説得力があり、その不完全燃焼感に逆にほっとする。大団円とはいえない。しかしマリコたちは、ゆるやかに、ささやかにでも確実に救われて幕が降りた。

 現実をかわいく切り取り続ける益田ミリの、真骨頂といえる結末だ。

(新潮社 1200円+税)=アリー・マントワネット

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