【論説】米国が中国への制裁関税第3弾などを発表、中国もこれに対抗して直ちに報復措置を打ち出した。米中貿易摩擦が一段と激化している。この状況に、米国内で批判が高まっており、特に農産物輸出に打撃が大きい農家から不満が噴出。トランプ大統領の中間選挙をにらんだ仕掛けが、足元からほころびそうな気配だ。

 米国は今月はじめ、中国への制裁関税第3弾に当たる年2千億ドル(約22兆円)相当の製品への税率引き上げを発表。7日には、これまでに決定していた制裁関税第2弾を23日に発動することも示した。

 中国の米国からの輸入額は対米輸出の3分の1以下で、制裁関税の応酬は米国に分があるとされる。米経済は減税効果などで今のところ好調。米経済政策の司令塔、クドロー国家経済会議(NEC)委員長は3日、「中国経済は困難な状況だ」と指摘、強硬路線の継続を改めて表明した。

 だが、貿易摩擦が米国の輸出産業に打撃なのは間違いない。中でも農家は、大統領選で勝利した原動力の一つである。トランプ氏にとって農家の反発は皮肉な状況といえる。

 米国農業の柱である大豆は、輸出の比重が大きい。農林水産政策研究所(東京)の資料によると、中国への大豆輸出は、2000年のデータで416万トン。これが15年には3135万トンと大幅に伸びた。

 しかし、中国による25%の報復関税発動で、米農務省は18年9月~19年8月の大豆輸出高予測を1割以上引き下げた。米大豆輸出協会が依頼した大学の調査では、中国への輸出は7割減少するとしている。

 輸出農家には、米が離脱した環太平洋連携協定(TPP)への期待も大きかった。政権に対し「裏切られた」「願いと正反対のことばかりする」と憤りの声が上がっている。7月に打ち出された120億ドル(約1兆3千億円)の農業支援策にも、「付け焼き刃だ」と冷めた見方が出ている。

 欧州連合(EU)は7月、米の要請を受けて大豆の輸入拡大で合意した。とはいえ、アジアは大豆需要が急伸している地域。南米産大豆が生産量を拡大する中、中国販路を失うのは米農家にとって死活問題だ。

 加えて第3弾の制裁関税は消費者向け品目が多く、米の国民生活を直撃する。中国で活動、自国に輸出している米系企業からも悲鳴が上がる。対中制裁は不公正な貿易慣行の是正が名目で、それ自体は必要だが、貿易戦争の現状は米国民自身を痛めつけているとしかみえない。中間選挙に向け、逆に支持離れを招いているとの指摘もある。

 日本は保護主義的政策を強める米国に対し、日系企業の貢献を訴えてきた。米国で9日から開かれる新たな日米貿易協議でも、この主張を繰り返すはずだ。同時に必要なのは、米政権内に冷静さを取り戻す余地があるかどうか、貿易戦争の長期化は本当に避けられないのか、見極めることだろう。それによって日本の取るべき戦略も変わってくる。

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