【論説】医を志す多くの若者の進路や人生を狂わせてしまったことを思えば、怒りを禁じ得ない。

 東京医科大の不正入試に関する内部調査報告書で、女子受験者に加え、3浪以上の男子に対しても合格者数を抑制するための得点操作が行われていたことが判明した。男女で入学定員を設定することは法的に可能だが、同大学側は事前に伝えておらず、詐欺的行為であり差別以外のなにものでもない。

 懸念されるのは、他の私立大医学部でも同様の得点操作などが行われているのではないかとの指摘があることだ。差別疑惑の発端は文部科学省前局長の佐野太被告らによる贈収賄事件である。文科省は監督官庁として徹底調査に全力を挙げなければ、その存在意義が問われよう。

 報告書によると、入試の1次試験で前局長の息子を含む6人に最大49点を加点。2次試験の小論文では全員に「0・8」を掛けた後、男子の場合、現役と1、2浪の受験生に一律20点、3浪生には10点を加点。女子と4浪以上の男子には加点はなく、結果、女子と3浪以上の男子の得点が抑えられていたとしている。

 前局長の息子は1次試験で10点、2次試験で20点の加点があり、結果的に75人中74位で正規合格に滑り込んだ形という。前理事長の臼井正彦被告と前学長の鈴木衛被告は、息子を合格させることで、文科省の支援事業の対象校に選定され、1年分の3500万円の交付を受けた。さらに「同窓生の子弟を入学させ、寄付金を多く集めたい」との動機から他にも不正合格させ、個人的にも謝礼を得ていた疑いが持たれている。

 公平、公正であるべき入試を冒とくするものである。問題はこうした合格者の調整が20年以上前から繰り返されてきたことだ。前理事長らの独善がなせる業とはいえ、理事会や内部監査室、監事などの機能不全は目を覆うばかりである。どう出直しを図るのか、また不正で不合格となった受験生をどう救済するのかなど、重い課題が残る。

 とりわけ、女子の合格者数の抑制は、大学病院や系列病院での医師不足を避けるため、出産や育児で休職したり退職したりする可能性のある女性医師の数を減らす狙いがあったとされる。ならば育児や家庭との両立を支援し、誰もが働き続けられる環境をつくるのが先決だろう。両立を支える国の事業に選ばれ、約8千万円の補助金を得ていたというから「二枚舌」とのそしりは免れない。

 日本の女性医師の割合は約2割と経済協力機構(OECD)加盟国の中で最低水準にあり、平均の半分程度。突出した長時間勤務が家庭との両立を阻んでいる現状があるからだ。厚生労働省の検討会は2月に緊急対策として、看護師への業務移管や当直明け勤務の負担軽減、複数の主治医で診る仕組みなどを提案している。大学の不正入試防止策は無論、医療界全体がわが事として改善していく覚悟を持つべきだ。

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