第100回全国高校野球選手権大会の開幕試合で始球式を務める松井秀喜さん=8月5日、甲子園球場

 高校野球の夏の甲子園は、初日から好試合が続いている。

 さらには、過去の名選手による「レジェンド始球式」も好企画だ。

 開幕試合では、松井秀喜氏(石川・星稜)が、高校の後輩相手にワンバウンドの投球で頭を抱え、2日目には1979年に春夏連覇を達成した箕島(和歌山)の石井毅氏が投げ、その試合の球審を石井氏と延長18回を投げ合った堅田外司昭氏(星稜)が務めた。

 マウンドで笑顔をかわすふたりを見て、奇跡のような瞬間だと思った。

 そして3日目は、1974年に当時1年生だった原辰徳氏を擁する東海大相模(神奈川)と熱戦を繰り広げた定岡正二氏(鹿児島実)が登場した。

 みんな、髪に白いものが混じっている。長い時間が流れたのだと実感するが、彼らが甲子園で見せた姿は、不滅だ。

 過去と現在をつなぐ、100回という節目にふさわしい演出だと思う。

 そしてまた、100回大会の試合を見ていると、新しい「トレンド」を読み取ることができる。継投だ。

 特に印象的だったのは、慶応(神奈川)対中越(新潟)の試合で、中越の本田仁哉監督は小刻みな継投を用いて、接戦に持ち込んだ。

 先発は右腕の山本雅樹。しかし、中盤以降はライトに入っていた左腕の山田叶夢が、慶応のトップバッター宮尾将が打席に入るとマウンドに上がった。そして慶応が下位打線に回ると、再び右腕の山本と交代する。継投は5度に及んだ。

 発想としては、プロの継投と一緒だ。左の好打者には、サウスポーをぶつける。

 プロであればブルペンから投手を投入するが、高校野球では打力も重要になるから、投手と野手の間でポジションチェンジをする。

 先発の抜きんでた力で抑え込もうとするのではなく、「確率論」を重視した本田監督の采配は、2対3で敗れたとはいえ、全国の指導者に影響を及ぼす可能性があると思う。

 投手の駒は、甲子園を勝ち抜くにあたっては「十分条件」になりつつあり、創成館(長崎)は部員123人のうち、実に投手が38人もいるという(今大会のベンチ入りメンバーのうち、投手は5人)。

 今後、投手の球数制限や連投制限の議論が出てくるのは間違いない。

 そのとき、どれだけ実戦で起用できる投手をリクルート、育成できるかが指導者の力量につながっていく。

 このトレンドは止めることができない。そうなると、全国的に見て私立校の優位が一段と鮮明になるはずだ。

 公立校で選手の推薦枠を設けているところはあるものの、全体の数では私立校とは比較にならない。

 100回の節目、甲子園はノスタルジーと新しい流れのなかで試合が続いていく。

生島 淳(いくしま・じゅん)プロフィル

1967年、宮城県気仙沼市で生まれ。早大を卒業後広告代理店に勤務し、99年にスポーツライターとして独立。五輪、ラグビー、駅伝など国内外のスポーツを幅広く取材。米プロスポーツにも精通し、テレビ番組のキャスターも務める。黒田博樹ら元大リーガーの本の構成も手がけている。

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