【論説】福井県内の9市町で、住民基本台帳や行政事務を管理する「総合行政情報システム」に障害が発生した。7月22~30日の長期間にわたって、納税証明書の発行や転入・転出手続きなどの窓口業務が滞り、メールや決裁文書をやりとりする内部システムが使えなくなる異常事態となった。今後、原因究明や再発防止策の検討が進むが、広域事務組合や自治体には、万一に備えたリスク管理体制の再構築を求めたい。

 今回の障害は、9市町が共通して使う行政システムの管理を委託している坂井市の業者が仮想ネットワークのソフト更新を行ったところ、サーバーの通信障害が発生。22日未明から福井坂井地区広域市町村圏事務組合に入るあわら市、坂井市、永平寺町や、おおい町で転出・転入手続き、一部の証明書発行といった窓口業務ができなくなるなど、9市町で影響が出た。

 自治体の業務は法律で規定されており、同規模の自治体であればその内容はほとんど変わらない。このため、広域事務組合などで共通のシステムを使用することは合理的だが、一方で一度問題が起きると、影響は広範囲に及ぶ怖さがあらわになった。

 問題は、システム障害発生から完全復旧までに1週間以上を要したことだ。当初、業者は23日の開庁前までの復旧を自治体側に伝えていたが、その後、復旧目標時期が数回先送りされ、全自治体で復旧したのは30日。幸い、転出、転入などが少ない時期だったため、窓口の大きな混乱はなかったものの、ある自治体関係者は今回のトラブルを「災害レベル」と言い切った。

 行政システムに詳しい専門家は、システムトラブルは起きるとの前提で、バックアップ体制がとられていたはずと指摘する。その上で「平常時で(長期に障害が続いた)この状態なら、想定できないことがある災害時は、重大な問題が起こる可能性がある」と警鐘を鳴らした。振り返れば、今年2月の大雪時の混乱は、集落のコミュニティー機能や互助・共助機能の低下などを浮き彫りにしたが、自治体として十分な危機対応がとられていたのか疑問を持ちたくなる。

 住民生活に直結する基礎自治体の業務において、危機の回避、危機発生時の被害の最小化、住民からの信用構築の視点は欠かせない要素。契約に問題はなかったのか、契約内容は履行されていたのか、業者の技術力を正確に評価できていたのか。さらには合理化が先に立ち、市民生活を守るという本来の視点は欠けていなかったか。今回のトラブルを一業者の責任で済まさず、浮かび上がった教訓を受け止め、備えを着実に高めていく必要がある。

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