【越山若水】このごろ都にはやるもの―とくれば夜討(ようち)、強盗、にせ綸旨(りんじ)。さらに召人(めしうど)、早馬、虚騒動(そらさわぎ)…と続けられる人もいるだろう。かの「二条河原の落書」はあまりに有名だ▼京都の二条大橋付近に掲げられたとされるのは700年近くも前。しかも、中身は天皇親政に批判的。それでいまなお大勢の口の端に上るとは、思えばすごい▼ニヤリと笑える風刺は、時には正面きった正論より力を持つ。その最高傑作が先の落書なら、伝統を現代に継ぐものはないか。それはツイッターへの投稿にあった▼「夜間の当直、当直明け外来、外来終わったら病棟、土日も病院、みたいな激務は女医には向いてないって主張散見しますが、よく聞いてください」とあり、オチの一言が付く▼「男性医師にも向いてない」。あぁそうだった、と目からうろこが落ちた。大学病院などの勤務医たちは日々、過酷な勤務を余儀なくされていると聞く。その改善が先決だ、と▼補足するとこの投稿は、東京医科大の入試疑惑に対する意見の一つ。女子は一律減点、という差別に悲憤慷慨(ひふんこうがい)する声が殺到するなか意表を突いた▼減点して合格者を絞るのは、激務を理由に医療現場が女医を望まないから。でも、男性なら激務でいいはずはない。医療関係者とおぼしき投稿主は、医療界を覆う危うい論理を軽やかに一刺しした。現代版落書にも時々、秀作がある。

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