【論説】広域的な水素エネルギーの関連産業や活用社会の拠点化を目指す敦賀市は本年度、水素社会実現に向けた「調和型水素社会形成計画」をまとめる。民間の水素ステーション設置計画や新庁舎への水素エネルギー供給装置の設置検討など、具体的取り組みも見え始めてきた。水素社会実現には課題が山積するが、同市が基幹産業と位置づけてきた原子力分野の先行きが不透明な中、他の自治体に先んじた取り組みとなるか注視したい。

 水素関連事業は、県内や滋賀県北部の周辺5市町と広域経済圏を目指す「ハーモニアスポリス構想」の一環。原発に頼りすぎない産業構造の複軸化を図るのが狙いだ。

 水素は、水や化石燃料、メタノールやエタノール、下水汚泥、廃プラスチックなど、さまざまな資源から作ることができる上、発電の際に二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しない。水素が次世代エネルギーとして注目されるゆえんだ。国は昨年末、水素基本戦略を打ち出し、2030年までに水素発電の商用化や、自動車やバスなどでの利用拡大を目指していく。

 敦賀市が水素エネを推し進めるのは、同市が優位性を持つからにほかならない。水深が深く大型船舶が接岸可能な敦賀港があり、水素で発電した電気を運ぶ送電設備も既にある。関西や中京圏に比較的近い立地条件のほか、半世紀にわたる原発との共存で市民のエネルギー政策への理解は高いというのが市の考えだ。

 市の計画案では25年までの短期、30年までの中期、50年以降の長期に分け、短期的には水素ステーションや燃料電池(FC)バス2台、自立型燃料電池システム2基などの導入を進める。中長期ではこの数字を伸ばし、水素発電所や研究開発拠点の整備、大規模で安価なサプライチェーン実現などの未来像も描く。

 ただ、水素社会の実現に向けた道のりは平たんではない。割高な水素のコスト削減、水素生成時の二酸化炭素排出抑制、水素の輸送・貯蔵・発電などの技術確立、FCバスや燃料電池車(FCV)の普及、水素ステーションの拡充など課題は多く、今後、産学官で研究が進むと考えられる。既に福島で水素製造施設が着工、神戸市では発電試験設備の運用などが始まっているが、国と民間主導が大半で、自治体レベルで複層的な産業化へ向けた取り組みはまだ始まっていない。

 大地震リスクなどを考えれば日本海側にも水素拠点は必要で、太平洋側に近い敦賀は有力な候補地といえるだろう。優位性を生かしながら民間や国、県と連携を進め、一つ一つずつ着実に成果を出していくことが必要だ。

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