【論説】西日本豪雨被災地で、中小企業が深刻な状況に置かれている。中小企業庁によると、災害救助法が適用された11府県内各地の窓口に寄せられた相談件数は被害発生から2週間余りで1800件を超えた。設備損壊や操業停止などによる損失の全体像が見えてくるのはこれからだが、日本経済全体への影響が無視できない可能性もある。政府は早急に実態を把握し、支援の手段を尽くすべきだ。

 相談件数は、商工会議所や日本政策金融公庫などが設けた約250カ所の状況をまとめたもの。特に広島、岡山、愛媛3県には相談の8割以上が集中、被害の大きさがうかがえる。

 相談で目立つのは資金繰りである。被災地では、操業の要である貴重な設備・機器が水没、操業しようにもできなくなった事例があちこちで発生した。地域経済を担う中小企業が、その生命線である技術を直撃された格好だ。製品が泥水にまみれ、出荷できなくなった企業も少なくない。

 企業にとって、事業継続計画(BCP)の対象は地震やテロなどが主で、洪水は盲点となっていたことが指摘されている。物流の混乱も操業の不安定さに拍車を掛け、特に中小零細で影響長期化の懸念が大きい。廃業を考え始めていたり、直接の被害は軽微でも顧客の多くが被災した上、「自粛ムードがあって需要が見込めない」と見通しが立たなかったりする事例が頻発。これまで生活再建で手いっぱいだった経営者もおり、経営相談は今後ますます増えるだろう。

 損失額の全容は見えていないが、復旧事業見込み額の18日時点の内閣府集計は農地など161億円、公共土木施設3210億円、中小企業被害4738億円。農林水産関係被害も公表されるごとに数十億~数百億円単位で拡大している。こうした数字はまだ氷山の一角にすぎない。今年の台風シーズン本番はこれからで、逆走した12号のように想定外の被害の追い打ちがいつあるかも分からない。

 政府は24日、西日本豪雨など大雨被害について激甚災害指定を閣議決定。特定非常災害適用と合わせ、被災自治体の財政負担軽減に一定の道筋を付けた。ただ民間については、債務返済猶予や、農林漁業者向け融資無利子化などは打ち出したものの、多様な支援ニーズに制度が追いついていないのが実情。支援機関による低利融資にも先が見えない経営者からは「結局負債を増やすだけ」と否定的な見方があり、補助金、給付金を求める声が上がる。

 消費増税が来年10月に行われるが、被災地が耐えられるかについては慎重な見極めが求められる。東京五輪関連工事の影響による復旧事業の人手不足も懸念される。復旧復興の財源捻出も課題となる。

 政府は「先手先手」を口で言うばかりでなく、こうした課題への対応を政策として早めに提示し、被災地の不安除去を図る必要がある。それが日本経済への影響を最小限に食い止めることにもなる。

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