ヒートショックを防ぐには脱衣所を暖房機で温めるのも有効だ

安全に入浴するためのポイント

 寒い冬、体がポカポカと温まる風呂は至福の時。だが、家庭での入浴には思わぬ危険が潜む。特に冬場に気をつけなければならないのが、急激な温度変化により起きる体調不良「ヒートショック」。全国調査では、福井県は入浴中の事故の割合が他の地域に比べて高く、県内の専門家は、住環境や入浴習慣の見直しが必要と警鐘を鳴らす。

 ■高齢者が9割

 消費者庁によると、2014年に家庭の風呂で突然、意識を失うなどして溺死した人は全国で4866人で、04年の約1・7倍に増えている。65歳以上の高齢者が9割を占めた。事故の約半数は12〜2月に起きている。溺死以外の事故も含めると年間、2万人近くが入浴中に亡くなっていると推計される。

 また、県衛生環境研究センターの元総括研究員、松井利夫さんが、1999年から2005年までの7年間を対象に、全国の家庭の風呂での溺死による死亡率を調べたところ、福井は男性が3番目、女性が4番目に高かった。

 入浴と健康の関係を考えるグループ「お風呂ネットふくい」会員で、福井大医学部附属病院の木村哲也救急部長は「年間に風呂で亡くなる人は交通事故死者より多い。風呂は危険な場所だと意識するべきだ」と訴える。

 その原因の一つが、「ヒートショック」と呼ばれる健康障害。暖房が効いた部屋を出て寒い脱衣所で服を脱いだり、長湯して脱衣所に出たりした際、温度差で血管が収縮して血圧が上がり、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こす恐れがある。

 ■改修費用を補助

 富山や新潟でも高い溺死率を示す一方、より外気温が低い北海道や青森は率が低かった。医療関係者や工務店でつくる「ふくい健康・省エネ住宅推進協議会」副会長で、住宅機器販売のアロック・サンワ(福井市)の石橋智洋専務が理由を解説する。「冬場は氷点下が当たり前の北海道の住宅は、断熱性能(室内外の熱の出入りの遮断)が高く、家全体が暖かい。同じ雪国でも福井は普段過ごす部屋だけ暖を取る『部分暖房』が一般的。家の面積も広く部屋数も多いため、温度差ができやすい」

 国土交通省は14年度から、住宅の高断熱化改修に向けた「スマートウエルネス住宅等推進モデル事業」に乗り出した。改修前後で血圧などの健康調査に協力することを条件に一部費用を補助している。

 勝山市の中村喜久雄さん夫妻は15年に補助金を活用して、築約100年の家のリビングの床下や浴室の壁に断熱材を入れ、二重窓に替えた。浴室の天井からは脱衣所を温める温風も出る。以前はすきま風で夜中に目覚めることもあったが「温かくて快適」と笑顔を見せる。県内では同協議会が窓口となり、これまでに約10戸が改修した。

 ただ、家の改修には相応の費用や時間がかかる。木村救急部長や松井さんは、まず取り組む予防策として日頃の入浴習慣を点検することを求め▽湯温は40〜41度で、湯に漬かる時間は10分を目安にする▽浴槽に飛びこむように入らず、急に立ち上がらない▽入浴する前に同居者に一声かけて見回ってもらう—などを心掛けてほしいとしている。

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 ■ヒートショック 家の中の寒暖差がもたらす健康障害。暖房の効いた暖かい部屋と寒い脱衣所や風呂、トイレの行き来など急激な温度変化により血圧が変動することで、失神や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こすことがある。

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