1883(明治16)年に撮影された写真のガラス湿板

 福井県越前市の佐々木良一さん(72)宅に、1883(明治16)年に先祖を撮影した写真のガラス湿板が保管されている。県内で明治10年代の湿板写真が現存するのは珍しく、写真の普及を知る手掛かりになりそうだ。

 ガラス湿板は縦9・4センチ、横6・6センチ、厚さ2ミリ。台紙は残っていないが、黒い板の上に置いて撮影すると、写された母子の姿がくっきり。女性は着物姿でげたを履き、いすに腰掛け、洋傘を手にしている。

 写真を納めていた桐箱も失われたが、上ぶたが残り、「武生鶴沢町 明治十六年四月 佐々木なみ女 年三十二才」と墨書きされている。なみは良一さんの母の曽祖母。旧姓は平池で、元鯖江藩士の娘だったという。武生鶴沢町は、現在の越前市本町、平和町辺り。

 県内には明治初期、福井一乗町(現福井市順化2丁目)に「旭斎」という写真師がおり、人物や風景の写真を残している。職業写真師が本格的に活動を始めるのは明治10年代以降のこと。1882(明治15)年には福井市で勝木惣三郎がガラス張りの写真場を新築。越前市(旧武生市)にも明治後期には数軒の写真館があったことが分かっている。

 今回の写真がどこで撮影されたのかは不明だが、福井の写真史に詳しい西村英之福井市美術館長は「スタジオではなく、軒先や庭に暗室を用意し、武生近辺で撮影した可能性もある。文明開化の中で県内でも写真師が活動し、旧士族や医者、商人などの間で写真が広まりつつあった時期」と話している。

 また、県内の古い写真や写真館の調査を行っている福井県立歴史博物館(福井市)によると、明治10年代に県内で撮影された写真は数点見つかっているが、写真師の活動実態はよく分かっていない。山形裕之副館長は「空襲の被害を受けなかった旧武生などにはまだ古い写真が残っている可能性がある」とし、情報提供を呼び掛けている。

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