裏側に「鬼」と書かれた紙が貼られ、竹の矢で射抜かれた的=2月1日、福井県小浜市次吉の一言神社

 福井県小浜市次吉(つぎよし)の一言(ひとこと)神社で2月1日、弓打ち神事が営まれた。男性2人が鬼に見立てた的を射抜き、今年1年間の無病息災や五穀豊穣(ほうじょう)を祈願した。

 「鬼」に見立てた的を射る小浜市次吉をはじめ、福井県嶺南地方では「弓打ち」の伝統行事が残っている。福井県立若狭歴史博物館の垣東敏博副館長によると、弓打ちは全国各地に残っているが、福井県内では嶺南に集中。その内容は地域によって異なり、的を「ヘビの目」に見立てたり、故意に的を外したりするところもある。

 垣東副館長によると、弓打ちは正月元日から3月にかけ、嶺南では敦賀市から高浜町まで広域に残っている。的を「鬼」や「ヘビの目」に見立てて災いを払う目的のほか、海岸沿いなら豊漁、山あいでは豊作を占う「年占(としうら)」の意味合いがあるという。

 小浜市次吉では的を射るまで何度も放ち続けるが、同市内でも矢代や志積、犬熊などでは決まった本数の矢を放つ。美浜町新庄では、故意に的を外すことが豊年満作になるとされ、射終わった後に矢を束ねて的に突き刺す。

 的を外す風習について垣東副館長は「当初は的に当てて豊作を祈願していたのが、射るのが難しく、縁起かつぎのために後世になって的に当てないようになったのでは」とみる。また、嶺南に弓打ちが集中している理由については「弓打ちは古くから続いているとみられるが、中世に浄土真宗が盛んになった嶺北と比べ、嶺南は伝統行事が残りやすかった可能性がある」と説明。「いずれにしても、嶺南の信仰深い土地柄を象徴する行事といえる」と話している。

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