【越山若水】雑誌をめくっていて刺激的なタイトルに目が留まった。その文を寄稿したのは劇作家の平田オリザさん。表題は「国を捨てる学力」である▼平田さんの言う「学力」とは、例えば実用的な英語力。国は、小学校から英語を教科として教え、まるで母国語のように話せるグローバルな人材を育てたい考えだ▼それが見事に実を結んだとしよう。優秀な人ほど海外へ出て行ってしまわないか。いま国が進めているのは「国を捨てる学力」ではないか。そんな趣旨だった▼そっくりの経験を田舎がしている。子どものためを思って勉強させ、都会の有名大学に進学させたら行ったきりに。老親ばかりが残された村は疲弊していく一方―という構図だ▼そのおかしさに気付いた人がいた。東井義雄(とういよしお)という教育者である。日本の高度経済成長が加速していく昭和三十年代に「村を捨てる学力、村を育てる学力」を提唱し、学力観自体を見直すよう説いた▼平田さんの一文が東井の考えを下敷きにしているのは言うまでもない。2人には接点がある。平田さんが教育・文化政策全般に関わる兵庫県豊岡市は東井の地元である▼豊岡市といえば、わが福井とも縁が深い。コウノトリの野生復帰に向け、お手本とするまちである。その取り組みが世界に類例がないのと同様、平田さんの教育政策は先進的だ。こちらも見習うべきかもしれない。

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