今シーズンも製氷作業に取り組んだ山田哲生さん=福井県敦賀市のニューサンピア敦賀

 家族連れでにぎわう福井県敦賀市のニューサンピア敦賀スケート場「アイスアリーナ」。山田哲生さん(62)=同市=が毎シーズン、ほぼ1人で製氷やメンテナンスに励んでいる。元五輪選手が練習するほど質の高い氷。徹夜で作業に当たることもあるという。「縁の下の力持ちでありたい」というプロ意識と、職人技が敦賀の冬のレジャーを支えている。

 山田さんは高校から20代半ばまではフィギュアスケート選手だった。1986年のアリーナオープン前、スケートの指導資格を持っていたことから声が掛かり、厚生年金事業振興団の職員として勤務した。

 県外転勤もあったが、2008年に国の方針で施設が民間へ売却されたのに合わせて再び敦賀へ。「定年は愛着のあるこのリンクで迎えたくて異動を希望した」という。

 今シーズンの製氷作業は、オープン2週間ほど前の昨年10月上旬に始まった。縦60メートル、横30メートルのアリーナに、長さ約1メートルの鉛筆ほどの太さのパイプ6千本を敷き詰め、中にマイナス10度の不凍液を流す。パイプに着いた水滴を凍らせることで、徐々に氷を厚くしていくという。7センチの氷にするまで約100回、30分間隔で水をまいた。

 作業は約2週間。徹夜もあり、アルバイトを雇っても「2日目から音を上げる」(山田さん)という。「自分もスケートをやっていたから、氷の質は譲れない。一気に凍らせると氷が軟らかくなる。締まった氷にするために、少しずつ作業をしないといけない」と秘訣(ひけつ)を話す。

 営業が始まってからも氷の様子を見ながら1日2、3回整氷車で表面を削りお湯をまく。氷を滑らかにするメンテナンスは欠かせない作業だ。

 いい思い出を持ち帰ってほしいと、来場者との会話も大切にしている。その中で、振り替え休日で月曜日は学校の休みが多いと気付き、今季から月曜日の営業時間を延長した。

 リンクの質の良さは口コミでも広がり、元五輪選手など日本トップクラスの選手も練習に訪れる。山田さんは「製氷作業は厳しくても選手からほめられたり、子どもが笑顔を見せたりすると救われる。ここから世界に羽ばたく選手が出てくれれば」と夢を描いている。

関連記事