63歳男性です。8年前、スキルス胃がんが健康診断で見つかり、胃、脾臓(ひぞう)、胆のうを全摘出、その他リンパ節を多数切除しました。5年間の抗がん剤治療を終え、ここ3年間の診断では数値に異常はありません。ただ、術後から腹部に軽い痛みがありました。これまでさほど気にせず過ごしてきましたが、ここ1年、より強い痛みが出てきました。人間ドックでは異常なしでしたが、なかなかつらい痛みです。この痛みとどう向きあえばよいかアドバイスをお願いします。(福井市)

 【お答えします】川上義行・福井赤十字病院外科部長

 ■胃切除後障害さまざま

 8年前に受けられた胃がん手術ですが、いわゆるスキルス胃がんは、胃癌(がん)取扱い規約(日本胃癌学会)の定義する進行胃がん分類の4型(びまん浸潤型)にそのほとんどが含まれます。病変部には著しい潰瘍形成も周堤もなく、胃壁の肥厚・硬化を特徴とすることから、胃の粘膜側に病変が現れずに粘膜下層をびまん性に広がり、病変の境界は不明瞭となります。

 このような特徴により、時に内視鏡診断が困難な場合があり、その生物学的特性は悪性度が高く、腹膜播種(はしゅ)を起こしやすい予後不良な胃がんとして位置付けられてきました。症状がないことが多く、手術時点で非治癒因子を合併していることが多いとされ、手術後5年生存率が10%程度と治療成績は極めて不良となっています。そのため手術後においても、進行再発を抑えるための抗がん剤治療を受けていただく必要があります。

 さて、ご相談の、手術後からお悩みの腹痛についてですが、一般的に胃切除後には胃切除後障害がしばしばみられ、生活障害やQOL(生活の質)の低下を招くことから臨床上の問題となっています。

 機能的障害として「ダンピング症状」といわれる食事に関連した腹痛が起こることがあります。食後に悪心、腹痛があったり冷や汗が出たりしますが、栄養指導を含めた食事療法や薬物療法で治まることも多いと思われます。

 器質的障害は晩期障害ともいわれ、逆流性食道炎による胸やけ、胸背部痛、吻合(ふんごう)部潰瘍、狭窄(きょうさく)による上腹部痛、胸やけ、悪心などの症状がでることがあります。また、腸管癒着による通過障害に伴う蠕動(ぜんどう)痛の訴えがしばしば見受けられます。薬物療法で治まる軽度のものから、入院治療を要する場合もあります。

 ■精密検査受けて

 今回のご質問では腹部の痛みの性状がここ1年で変化してきているようです。近年の抗がん治療の進歩によって高い腫瘍縮小効果(奏功率)が得られるようになり、長期生存される方もおられるなど治療成績は向上していますが、その反面、手術後5年近く経過してから再発転移病変が顕在化してくることも報告されています。再発病変あるいは大腸がんなど他臓器に発生した2次がんによる腹痛の可能性を除外するために、画像検査を含めた精密検査を専門の医療機関で受けていただくことがよろしいと思います。主治医の先生にご相談されることをお勧めします。

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