【越山若水】わが国と同じ仏教国でもずいぶんと様子が違うものだと感じ入ったニュースである。タイの、あのサッカーチームの少年らが出家したという▼大がかりで困難な救出劇だった。13人全員が無事に生還したのには世界中の誰もが安心したが、救出活動中に潜水士が亡くなった。出家は、その追悼のためである▼キリスト教徒の1人を除く少年らが先日、地元のお寺で修行生活に入った。期間は9日間、と聞いたところでタイの出家に興味を抱いた人もいるかもしれない▼出家といえば俗世間を捨て、仏門に入ること。捨てた以上は戻れない、と思うのが日本人だ。が、タイでは男性なら一生に1度は出家するよう奨励され、休暇も保障されている▼子どもも、夏休みなどに僧の経験をして普通の生活に戻ってくる。つまり、出家するのも還俗(げんぞく)するのも、日本人からすれば実に自由。仏教や寺が暮らしに根付いていると見える▼彼我の違いが分かるタイ女性の言葉を、高野秀行著「移民の宴」に見つけた。「日本に来たばかりの頃、道に迷ってしまい(略)お寺の中に逃げ込んだら警察に通報され」ショックだった…▼タイの寺は扉もなく、いつでも困った人を受け入れる。そもそも日本とは歴史的に仏教の伝わり方が異なるから、比べるのは乱暴だ。でもちょっぴり、うらやましくもある。わが福井は仏教王国、と誇るだけに。

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