嶺南医療振興財団の奨学金を受け、小浜病院の医師として働く2人=福井県小浜市の同病院

 地域医療向上を目指し奨学金で医学生を支援してきた嶺南医療振興財団(福井県美浜町)は、2007年の設立から10年の節目を超えた。これまで50人に奨学金を貸与しており、福井県嶺南地方の医療現場で現在、6人の医師が奮闘。嶺南の医療水準向上に一役買っている。ただ新規の奨学生受け付けは15年度で終了しており、今後はいかに地域に定着してもらうかが課題になっている。

 財団は福井県のエネルギー研究拠点化計画の一環として、嶺南の医師確保を目的に関西電力が設立。福井大医学部医学科と、県内高校卒業生で全国の大学の医学部医学科に進学する若者を対象に奨学金を貸与してきた。入学金や授業料、生活資金など、卒業までの6年間で1人当たり支給額は1080万円ほどだ。

 卒業後の臨床研修(2年間)を経て、嶺南の指定医療機関に4年間勤務すれば、奨学金の返済を免除する仕組み。奨学金を利用し、現在嶺南で勤務している医師は6人おり、今後勤務を予定している大学院進学者や専門医研修生もいる。

 小浜市の杉田玄白記念公立小浜病院では現在、同市出身の外科医岸和樹さんと美浜町出身の内科医井上元気さんが勤務している。ともに高校2年生の時に医師の道を志し、「地元で仕事をしたいと思っていたので、奨学金はありがたかった」と振り返る。

 人口当たりの医師数が全国平均より少ない嶺南での勤務について、岸さんは「多くの種類の手術機会があり、一例一例を大切にできる」とし、井上さんも「さまざまな疾患に対応する必要がある」とやりがいを語る。若手扱いが許されない環境だけに、都会で勤務する同年代より経験が積めるという。今後は専門性を高めるため、一時的に都会へ出る可能性はあるというが、2人とも最終的には嶺南の医療向上に貢献するつもりだ。

 財団の新規奨学生受け付けは15年度で終了しているため、2人のように嶺南での定住を希望する医師がいなければ、奨学金の効果がなくなる可能性がある。今後は医師に嶺南にとどまってもらうための取り組みが欠かせない。

 財団側は、嶺南で働く不安を取り除いてもらおうと、定期的に奨学生とOBの交流会を開催。しかし抜本的な定着対策は、待遇面も含め病院側による部分が多い。

 小浜病院の小西孝院長は、18年度に始まる「新専門医制度」が解決策の一つになるとみている。「医師にはスペシャリスト(専門型)とゼネラリスト(総合型)両方の需要がある。地方の病院は後者の受け皿になれる」と語り、総合診療医の養成に活路を見いだしている。

 嶺南の医療機関は連携して総合診療医の研修プログラムを組み、本年度から実際に研修をスタートさせている。小西院長は「新専門医制度では、医師がより自分の進路を主体的に選ぶようになる。医師の獲得競争が激しくなるだろうが、嶺南の病院で連携し、確保に努めていきたい」と話している。

 ■新専門医制度

 学会によって違う専門医の認定基準を第三者機関「日本専門医機構」に一元化し、医療の質を高める目的で導入される。専門医を養成する医療機関が症例の多い都市部に集中し、医師の偏在が加速するとの懸念から、2017年度の導入予定を1年間先送りすることが決まっている。

 ■福井県内の医師数

 微増傾向にあり、2014年で1896人。人口10万人当たりの医師数は240・0人で、全国平均の233・6人を上回っている。ただ、県内地域別に見ると、福井・坂井圏が338・9人であるのに対し、奥越圏は113・3人、丹南圏は122・6人、嶺南圏は163・9人で、県内では比較的人口の少ない地域の医療に課題がある。

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