【論説】アルゼンチンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、成果が薄いまま閉幕した。共同声明は貿易摩擦の激化に「世界の経済成長の下振れリスクが増している」と危機感をあらわにし、保護主義に傾斜する米国などには「対話と行動」を促したが、抑止策提示には至らなかった。摩擦を仕掛け、孤立の道を突き進むトランプ米政権を前に、多国間協調を図るはずの場の形骸化が浮き彫りになった。

 G20は複雑化する世界の課題に対処するため、先進国に新興国も加えて発足。財務相・中央銀行総裁会議はアジア通貨危機後の1999年に、首脳会合は2008年のリーマン・ショックを機に始まった。多様な国が集まり、利害対立を抱える中でも政策協調を行う場としての機能があった。

 しかし、今回の共同声明はリスクに対する具体策を示さず、米国に政策変更を迫るものではなかった。かろうじて「保護主義と闘う」とした昨年の首脳宣言は再確認したが、宣言は米国のいう「不公正貿易への対抗措置」も認めている。米国と中国が制裁関税をぶつけ合い、世界の貿易の不活性化が懸念される現状を追認するものともいえる。

 保護主義的政策は、特定の品目について何らかの輸入制限措置を設け、国内産業を守る狙い。自由貿易主義をうたう国であっても、部分的には何らかの保護策を取っている。程度の問題ともいえるため、そこにムニューシン米財務長官が「米国が保護主義という根拠はない」と主張する余地がわずかに成り立つ。

 だが、米国の現状を、その主張通り理解している国はほとんどないだろう。自動車輸入制限を「安全保障上の脅威」を理由に検討していることをはじめ、一方的振る舞いが目立つ。19日に行われた米商務省の同輸入制限に関する公聴会では日本側だけでなく米業界団体も反対意見を訴えたが、トランプ氏がこういった声に耳を傾ける様子はない。米国と欧州連合(EU)の25日(日本時間26日未明)の首脳会談も自動車貿易などを巡り波乱含みである。

 議長国アルゼンチンの財務相は、「貿易紛争解決は2国間交渉や世界貿易機関(WTO)で」と、あきらめにも似た発言をした。こうした意見は多国間の対話を避け、1対1の交渉に持ち込んで利を得ようとする今の米国のやり方を認めてしまう。今や「世界のリスク」ともなった米国の政策を変えるには「多国間で話をしないといけない」(麻生太郎財務相)はずだが、その道筋が描けないまま会議は閉幕した。

 会議では、欧米の金融緩和出口戦略に伴い、通貨安など新興国市場の混乱の現実化が鮮明になった。日本も来年10月に消費増税を控える。共同声明は「世界経済の成長は力強い」としたものの、内外に不安要因が潜んでいる。

 来年のG20は日本開催。世界が多国間協調に立ち戻り、G20が経済安定に向け役割を果たすため、日本は重い責任を負った形だ。

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