越前松島水族館に寄贈した養殖アラレガコの展示を見守る若狭高生(手前)ら=9日、福井県坂井市の同水族館

 かつては福井県の九頭竜川を象徴する魚だったアラレガコを保全する機運を高めようと、福井県立大と若狭高が9日、共同研究を実らせた養殖魚を福井県坂井市の越前松島水族館に寄贈し、常設展示が始まった。同水族館は約40年前に全国で初めてアラレガコの繁殖を成功させたが、その後の取り組みは途絶えていた。県内で志を継いだ研究成果が、原点となった施設に返されることになり、県立大の研究者は「この地からアラレガコの文化が発信されるのは大変意義深い」と感慨に浸った。

 九頭竜川流域ではかつてアラレガコの伝統漁法や食文化が発達したが、河川改修など環境の変化で生息数が減少。県のレッドデータブックで県域絶滅危惧2類に登録されている。保全をめぐっては、越前松島水族館の石橋敏章前館長が1975年ごろ、ふ化と人工飼育に成功。全国初の功績がたたえられ、79年に日本動物園水族館協会の「繁殖賞」を受賞した。だが、当時は地元では保全の機運が高まらず、研究の道はいったん閉ざされていた。

 県立大と若狭高(当時小浜水産高)は2012年度からアラレガコ保全の共同研究に乗り出し、海水を3分の1取り入れた汽水による養殖技術を確立。料理店への出荷も進む中、アラレガコと同水族館の縁を知り、常設展示を依頼した。

 寄贈したのは、養殖で体長20センチ程度に育ったアラレガコ8匹と稚魚5匹。水槽に移されると、えらぶたに鋭いトゲを持つ独特の風ぼうで泳ぎ回り、連休中に訪れた県内外の家族連れの注目を集めた。同大海洋生物資源学部の田原大輔准教授(46)は「福井県の養殖技術が始まった場所で、生きた姿を大勢に見てもらいたい」と期待を寄せた。

 「ここまで長い年月がかかり、ようやく私たちの代で養殖したアラレガコを一般展示できた」と喜ぶのは、同校海洋科学科の新谷勝利教諭(45)。アラレガコの文化が根付いた大野市から福井市にかけての生息地は国の天然記念物指定を受けており、「福井にとって本来なじみがある魚であることが広まってほしい」と力を込める。同科2年の武石侑大さんは「自分たちも環境保護に影響を与えられるように頑張りたい」と、今後の希少種研究に意欲を燃やしていた。

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