2019年度の打ち上げを目指す超小型人工衛星「県民衛星」のイメージ図(アクセルスペース提供の画像を一部加工)

 20XX年夏。福井県地方は前例のない猛暑に見舞われた。福井のブランド米「ポストこしひかり」の生育が心配される中、県民衛星のカメラが宇宙から捉えた水稲のタンパク含有量などのデータを生かし、農家は各自の田んぼで肥料の量や水位を管理。コメの品質を維持した。ほかにも防災、まちづくりなど幅広い分野で、県民衛星が活躍する時代が訪れていた—。

 人類初の人工衛星「スプートニク1号」打ち上げから節目の60年となる2017年。19年度の打ち上げを目指す県民衛星計画は、基本設計を経て県内ものづくり企業の技術力を結集させた製造・環境試験の段階に移る予定だ。県民衛星技術研究組合の進藤哲次理事長(ネスティ社長)は今後、衛星ビジネスは加速し、企業ごとに衛星を打ち上げる時代に入ると予想。「県と民間が連携し、先行して製造技術を磨き、新たなアプリケーションも開発していく」と意気込みを見せる。

 県民衛星は森林や海洋、災害に関する情報をはじめ、農業や都市行政まで福井で起きる事象、変化を宇宙から観測するミッションを担う。

 進藤理事長によると、搭載を計画する2台のカメラの解像度は、宇宙空間から地上の自動車の大きさを識別できるレベルという。衛星画像は地上の大型パラボラアンテナで受信し、データセンターに集約。画像情報を処理するアプリに、画像の特徴を自ら見つけて学ぶ人工知能(AI)の機能を付加させ、福井の“今”を捉える。

 画像データの変化を分析すると、地震や水害の現状をはじめ、土砂崩れなどの危険性も未然にキャッチできる貴重な情報源となる。コンピューター利用設計システム(CAD)と連携させて3次元で表示したり、小型無人機ドローンを併用したりすれば、より詳細な現状を把握できる。

 進藤理事長は「福井のために役立つものを、スピード感を持ってビジネス化していく。衛星の先進地として技術者を集結させることが、最終目標になる」と展望する。

 同組合顧問で福井工大の中城智之教授は、衛星データの「まちづくりへの活用」を思い描く。大野市の六呂師高原の星空を例に挙げ「衛星データで夜空の暗さを数値化し、市街地の光が届いていないことを証明できれば『日本一美しい』根拠になり、付加価値が一層高まる」と夢を語る。

 県内の宇宙関連スポットをつなぐ「宇宙ミュージアム構想」も提案する。福井市自然史博物館分館「セーレンプラネット」や県児童科学館(坂井市)を中心に、衛星の開発拠点となる県工業技術センター(福井市)、10メートル級のパラボラアンテナを備えた福井工大の衛星地上局(あわら市)などを観光ツアーに組み込むアイデアだ。

 点在する宇宙関連の資源を線でつなげ、輝ける“地上の星座”誕生を願う中城教授は、県民衛星の「未来へ飛び出す起爆剤」としての可能性に期待する。「地方創生に向けて宇宙を、福井のブランドに磨き上げたい」と目を輝かせた。

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