仕入れ先の農家と一緒にメニューで使う野菜を収穫するカフェ店主の牛久保星子さん(右)=福井県池田町藪田

 昭和歓楽街の風情を残す福井市中央1丁目の古いビル1階。若い常連客が集うクマゴローカフェの厨房から、食欲を誘う香りが漂う。季節の野菜のスープ、焼きおにぎり。食材となる米や野菜の多くは、店主の牛久保星子さん(31)が知り合いの県内農家に出向いて直接仕入れている。「人と人との距離が近いのが福井の魅力」。県内に移住して2年余り。コミュニティーの広がりに居心地の良さを感じている。

 移り住んだ当初は「何か(よそ者が)来たぞ」って遠巻きに見られている感じだった。でも福井の人って、いったん近づくとせきを切ったように仲良くなれる。疲れで体調が悪くなると、近所の人が「着替えを持ってきてあげようか?」「病院は?」って、お母さん代わりになって心配してくれた。ほんとに涙が出ちゃうことがたくさんある。

 仕入れでお付き合いしているのは米農家5、6軒と野菜が2軒。移住者同士の集まりだったり、そのまた知人を紹介してもらったりして、知り合った。おいしいんですよね、やっぱり丁寧に作っている農家さんだと。福井って狭いんだし、せっかくなら作った人の顔が見える食材を使わないと、もったいない。

 例えば、池田町の長尾農園では、お米を買うついでに、畑から野菜をいただくことも。「星ちゃん、これも持ってく?」って、かわいがってもらえて本当にありがたい。農家以外の知り合いから柿やタケノコのお裾分けをもらうこともあって、それも大事にメニューに取り入れている。

 福井は人口密度がちょうどいい。友だちの友だちをたどれば、ほぼ網羅していける感じ。同世代の移住者仲間も増えてきたし、人との距離感は居心地がいい。狭い人間関係を嫌って県外に出る若者もいるけど、大学進学までの人間関係は限られていて、福井にはもっといろんな人がいる。視点が違うつながりができると、見え方が変わるはず。

 言葉にしづらい魅力が福井にはたくさんある。言葉にすると陳腐な感じになっちゃう。暮らして感じるのが一番。あえて私が言葉にするなら、人間らしい生活ができるというか、ああ生きてるな、暮らしてるなという感覚。福井だとそれを感じやすい。

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