「新たな福井と出合う」をテーマに写真撮影する出地瑠以さん。見上げている先は老舗カフェ=福井市順化1丁目

 福井県越前市別印町の「八ツ杉千年の森」の撮影に向かっていた写真家の出地瑠以さん(33)=福井市=は、道中で一本の木を包む深い霧と出合い、思わずシャッターを切った。福井のしっとりとした空気の中で、「水」が姿を変えて見せるさまざまな表情を追い掛けている。東京とハワイでキャリアを積んだ出地さんにとって、福井は「自然が織りなす偶然の出合いが多い場所」。東京にもハワイにもない豊かさを感じている。

 写真家として福井にいると、感覚的にすてきだと思う風景に出合えることが多い。空も、星も、川のせせらぎも、緑も。八ツ杉千年の森に向かう途中で撮った霧の写真は、その瞬間に居合わせなければ、撮ることができなかった。15分ほどたつと、霧は晴れて、この景色はなくなってしまった。偶然のこの一枚が、私にとっての福井の風景。

 水にまつわる風景が好きなんだと感じる。森を包む霧、夕日が落ちる海、枝葉にうっすらと積もる雪−。福井のしっとりとした空気の中で、水が霧や雲、雪に形を変えた世界に目を奪われる。水がめぐる景色を、なんとなくいつも探している。

 高校を卒業して、アメリカの大学に留学したときは「福井は私の居場所じゃない」という気持ち。外に出たい一心だった。東京の会社へ就職して慌ただしい日々を見つめ直すと、「波の音を聞きながらハンモックで揺られる人生っていいな」と思って、25歳でハワイに渡航した。

 仕事の縁があって福井に戻った。久しぶりに暮らすと、やはり居心地がいい。福井に対する愛、そんな肩肘張った思いじゃなくて。雲一つないハワイの空と比べて、福井の空は雲の表情が豊かで面白い。だから、それを映す海も複雑で、さまざまな表現の仕方が生まれる気がする。

 木を包み込む霧のように情報の少ない風景は、人の想像力を刺激するのかも。そんな風景をたくさん見つけたい。

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