水槽で養殖しているバフンウニの成育状況を調べる日比野憲治さん=福井市鮎川町

 「越前うに」として知られる日本三大珍味の一つ「塩うに」の原料バフンウニ。福井県内の漁獲量が激減する中、福井の食文化を守ろうと、県水産試験場の元研究員日比野憲治さん(61)=同県敦賀市=が福井市鮎川町に養殖施設を造った。水槽での養殖に取り組み、安定供給を目指す。「数百年以上続く食文化を守り、越前うにの価値を高め、漁業者の収入増につなげたい」と話している。

 県水産課や県水産試験場などによると、県内でバフンウニの本格的な養殖事例はなく、全国でも初めてとみられる。

 同試験場によると、坂井市三国町雄島地区のバフンウニの近年の漁獲量(製品重量)は、1993年の1601キロをピークに減少傾向にあり、2009年以降は毎年200キロを割り込み、昨年は99キロだった。

 日比野さんは県水産試験場と県栽培漁業センターで約30年間、バフンウニの生態などを研究してきた。16年3月に退職したが、複数の漁業関係者から「越前うにを守ってほしい」と要望を受けた。越前海岸沿いの鮎川町にある旧旅館の建物を借り、自費で2千リットルの水槽12基、取水ポンプといった設備を整えた。4月から養殖を始めた。

 ウニを増やす方法としては、稚ウニの放流が一般的。しかし環境の変化に耐えられなかったり、漁獲範囲外に移動したりして「成長後の漁獲率は5割ほど。全滅することもあった」(日比野さん)という。外敵の捕食被害や、移動の恐れがない水槽での養殖に取り組むことに決めた。バフンウニは温度変化に敏感なため、雨水が入りにくく、大雨でも水温が安定している鮎川漁港の海水を水槽にひいている。

 当初は北海道や東北で行われているエゾバフンウニなどの稚ウニ生産を参考にした。両地域では、乾燥したり冷凍したりした海藻を餌にしているが、福井のバフンウニでは中身が少なくなるなど、うまく育たなかった。そのため、施設近くの岩場にある海藻を拾い集め、餌にしている。

 来年度は試験的に少量を出荷し、18年度に約60キロの本格出荷を目指す。日比野さんは「養殖とはいえ、天然ものと同じ海水、同じ餌を使っており品質に違いはない」と自信たっぷり。天然ものが低い価格で取引されていると憂慮し、「養殖ウニが適正な価格で販売されれば、相対的に天然ものの価値が高まる。越前うに文化の担い手である海女の収入を少しでも増やしたい」と、取引先も独自に開拓していくという。

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