【論説】森友学園の国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざんという前代未聞の不祥事や交渉記録の廃棄、自衛隊日報隠蔽(いんぺい)問題を受け、政府がまとめた再発防止策には、監視強化や悪質事案への重い処分などが盛り込まれた。一方で公文書管理法の改正や外部のチェック体制導入には踏み込まなかった。抜本改革には程遠く、対症療法にとどまったとの印象が拭えない。

 再発防止策の柱としては▽各府省庁の公文書担当幹部や新規採用職員への研修▽公文書管理への取り組み状況を職員の人事評価に反映▽改ざんなど悪質な事案には免職を含む重い処分を人事院で検討―を挙げており、一定の効果は期待できるだろう。

 だが、監視体制の強化策にある▽内閣府で特定秘密保護法の運用状況を点検する独立公文書管理監を局長級に格上げし、事務局として「公文書監察室(仮称)」を設置▽各府省庁に「公文書監理官室(同)」を新設し、トップに審議官級の「公文書監理官(同)」を据える―には疑問符が付く。身内の監視ではやはり限界があろう。

 公文書などに精通する識者からは、会計検査院のような、政府から独立した第三者機関を設置すべきだとの指摘がなされている。各府省庁の監察室には国立公文書館などから専門知識のある職員を派遣する方針も示されているが、ここは同館の権限や機能の見直しも検討すべきではないか。

 苦渋がにじむのが決裁文書の修正禁止を盛り込んだことだ。変更をする場合は決裁を取り直すと書かざるを得ない辺りに、官僚が守るべき基本中の基本の逸脱に手を染めた財務省の罪深さが改めて思い知らされる。電子決裁システムへの移行を加速化させる方針も出されたが、予算を伴うことにも留意する必要がある。

 懸念されるのは公文書をどう定義するかに踏み込まなかった点だ。公文書管理法は「職員が組織的に用いるもの」としている。このため、政策決定過程を検証する上で重要な文書であっても、職員の「個人的メモ」として作られれば公文書として扱われなかった。定義を広げる法改正は欠かせない。メールも公文書として扱うよう検討すべきだ。

 野党は罰則規定を設ける公文書管理法の改正案を提出したが、厳しくすることで官僚が文書を残さなくなる恐れも指摘される。都合の悪い文書は初めから作らないといった風潮がまん延するのは本末転倒だろう。

 改ざん問題では、1年以上にわたって国会がだまされた経緯がある。「国権の最高機関」の権威、行政監視機能が侵された重大な事案だ。民主主義の土台が大きく損なわれた。

 安倍晋三首相は防止策をまとめた閣僚会議で「失われた信頼を取り戻すのは至難だが、成し遂げなければならない」と述べた。だが、自身が一連の問題に真正面から向き合ってきたといえるだろうか。政治家が誰一人責任を取らないままでは、官僚の意識改革は進むはずもない。

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