「ギャンブル依存症を予防する教育や仕組みが必要」と話す大森晶夫教授=福井県永平寺町の県立大永平寺キャンパス

 カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)整備推進法は26日、公布、施行され、国内で疑いがある人が約536万人との推計があるギャンブル依存症の対策が焦点になっている。依存症の回復支援施設「福井ARC(アーク)」(福井市)の理事長で精神科医の大森晶夫・福井県立大教授は「いったん依存症に陥ると回復しても完治はしない」と指摘、予防のための教育や規制を訴える。

 2014年に厚生労働省の研究班が発表した推計では、ギャンブル依存症の疑いがある人が成人の約5%に上り、1〜2%の海外に比べて非常に高い割合を示した。福井ARCでも当初の利用者はアルコールや薬物を上回った。

 大森教授は「一般的にアルコール依存症が多いと思われているが、ギャンブル依存症の人は相当数いる。海外のカジノは特定の地域だけだが、日本の場合はパチンコなどが身近にある」と説明する。

 世界的に取り入れられている米精神医学会の診断マニュアルでは、13年の改定で初めてギャンブル依存症がアルコールや薬物の依存症と同じ分類になった。「脳がギャンブルに関する刺激にだけ反応し、それ以外には関心がなくなったり、行動のブレーキが悪くなったりするという画像検査の研究もある。脳がアルコールや薬物の依存症と同じ状態になる証拠がだんだん出てきた」

 ギャンブル依存症の場合、直接の健康被害がなく、本人や家族が病気と思いにくい。一方で「200万円、300万円といった借金を平気でつくり、失業や経済的な破綻、家庭崩壊につながる。うつ状態や自殺にいたる場合も少なくない」など影響は大きい。

 国は14年にアルコール健康障害対策基本法を施行し、薬物に対しても取り締まりや啓発を強化している。「ギャンブル依存症を診る医療機関は全国にもわずかで、回復プログラムを行う福井ARCのような施設も少ない。相談窓口すら知らない人がほとんど。潜在的な患者の多さに対して、国の取り組みは大幅に遅れている」と語る。

 今後必要な対策として、アルコールや薬物と同様に教育現場での予防教育を挙げる。さらにカジノができた場合は、時間や金額などで依存症の疑いがある人の入場を制限したり、過度なギャンブル性を規制したりする工夫を求める。公的な相談窓口の充実、民間施設や患者の自助グループへの援助を通し、「適切な治療、回復支援が受けられる仕組みをつくるべきだ」と強調した。

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