2017年の中止が決まっている国指定重要無形民俗文化財「夷子大黒綱引き」=2016年1月、福井県敦賀市相生町

 福井県敦賀市の各区で代々受け継がれてきた伝統行事が、年々姿を消している。地域の人口減少による担い手不足と運営資金の不足などが主な要因。国指定重要無形民俗文化財の「夷子大黒綱引き」も来年1月の中止が決まっている。昭和60年代以降では飯食い祭り(奥麻生区)や勧請吊るし(かんじょうづるし)(砂流区)など4件が休止に。専門家は「担い手不足は全国的に同じ。参加者の裾野を広げ若者が携われる体制作りが必要」と訴えている。

 2012〜14年度に県が行った「福井県の祭り・行事調査」によると、敦賀市内には87件の祭り・行事があり、うち11件は国や県、市の無形民俗文化財。「夷子大黒綱引き」は今年2月に開かれた地元保存会の臨時総会で高齢化と人口減少、資金不足を理由に中止を決定。9月には、継続的に中止することとし、市長あてに通知をした。

 夷子方と大黒方が綱を引き、夷子方が勝てば豊漁、大黒方なら豊作とされ、参加者や観光客を含めると毎年約千人が訪れる正月の風物詩。夷子大黒綱引保存会の上田隆夫会長は「文化財を守りたい気持ちは、地元のみんなが持っていると思うが現状のまま続けることは難しい」と苦渋の表情を浮かべる。

 存続問題は12月7、8日の敦賀市議会一般質問でも議員2人が取り上げるなど注目を集めた。

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 曽々木区で毎年11月に行われていた霜月祭り。古くから続いていた収穫感謝祭で「おんばさん」と呼ばれる若い女性が供え物を奉納し、明け方から区内を流れる冷たい笙の川で身を清めるのが習わし。

 おんばさんは独身女性が務めるしきたりで、独身女性がいなくなったのをきっかけに平成初期ごろに休止になった。谷口宗二区長は「一時は市内の学生を呼んで続けてはどうかという話も出たが、そこまでして続ける意味があるのかという意見もあった」と振り返る。結局、形を変えた継続は望まれなかった。

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 復活後に再び休止に追い込まれた行事もある。山あいの池河内区では毎年8月ごろ、太鼓を抱えて竹を背負い、音頭に合わせて駆け回る県無形民俗文化財の雨乞い神事「太鼓踊り」が奉納されていた。後継者不足で85年を最後に中断し97年、集落から市街地に出た若い世代が12年ぶりに復活させた。しかし、15年ほど前から行われなくなった。

 現在、区に住むのは3世帯の5人。若い世代は日常生活に不便のない市街地に家を建てて生活する。川口勉区長は「踊りは親から子、子から孫へ口伝えで伝承してきた。復活はうれしかったが、年とともに祭りのときに帰ってくる市街地の人も少しずつ減り、過疎化で伝承する側の区民も減った」と悔しさをにじませる。

 ほかにもここ30年ほどで飯食い祭りや勧請吊るしなど、特に中山間部の集落では人口減少が顕著でいち早く休止に陥っている。

 社会学が専門の福井大国際地域学部の田中志敬講師は、祭りの道具の収納などを写真付きマニュアルにまとめて伝承している団体の例を挙げ、「担い手の負担を減らし、参加の敷居を下げることが重要」と指摘。「伝統を重んじながら時代に合わせた変化も必要ではないか」と話した。

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